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砂を食べる魚!? レモンブダイ
 └─ 2024/12/16
 葛西臨海水族園の「世界の海」エリアにある「グレートバリアリーフ」水槽には、ときおりユニークな行動を見せる生きものがいます。それは、乳白色で丸みを帯びた体に、胸びれをパタパタと羽ばたかせるような泳ぎが特徴的なレモンブダイ(イニシャルフェイズ)です。

 レモンブダイを含むブダイ科の魚は、成長に伴って体色や模様が変化することがあり、初期の段階を“イニシャルフェイズ”、最終的な段階を“ターミナルフェイズ”と区別して呼びます。現在、水族園で展示しているレモンブダイは“イニシャルフェイズ”で、写真のように乳白色をベースにしたシンプルな体色をしています。


サンゴ礁域に生息するレモンブダイ(イニシャルフェイズ)

 ある日の開園前、水槽の見回りをしていたときのこと。水槽の底に広がる砂の上で、レモンブダイが何かを夢中に突いているところを目撃しました。私はまだえさを与えていないので、沈んだえさなどではないはずです。

 何を食べているのかと不思議に思い、レモンブダイの姿を追ってじっくり観察していると、パクパクと食べていたものの正体があきらかになりました。それは、“砂”そのものだったのです。


砂をかじるように食べる瞬間

 「砂を食べる魚」という衝撃の事実に大興奮し、もう一度しっかり見てみようと意気込んで観察を続けていると、さらなる事実があきらかになりました。レモンブダイが食べた砂の一部が、えらからパラパラと出てきたのです。


目を凝らさないと見えない、えらから出てきた小さな砂

 ブダイのなかまは一般的に、海藻などを食べる食性があり、サンゴや岩、砂などの表面に生育する藻類をえさにすることが知られています。水族園のレモンブダイも同様で、口に入れた砂から藻類をこしとって食べていたと考えられます。残った砂は、えらから出されたり、そのまま藻類といっしょに飲み込まれ、消化されずにフンと混ざって体外へと排出されたりします。砂はレモンブダイの“えさ”ではないにしても、“砂を食べている”ことは間違いないようです。

 飼育している生物たちのようすや健康状態を注意深く観察することが、水族園で働く私たちの日課です。そのおかげで、レモンブダイが砂を食べる瞬間に出会うことができました。

 みなさんも水族園を訪れた際には、水槽の前で立ち止まって、レモンブダイの少し変わった食性をその行動から感じてみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 吉武将希〕

(2024年12月16日)


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