井の頭自然文化園水生物園では、七井門から入って右手にサギ舎があり、コサギ、アオサギ、ゴイサギ、チュウサギの部屋が並んでいます。
サギのなかまは、田んぼや河川などでよく見かける身近な鳥で、カエルや魚などを捕えて食べています。繁殖期は基本的に4~7月とされ、オスとメスがペアになり、林の木の上などに巣をつくります。子育てはオスとメスが協力して卵を交代で温め、ひなが巣立つまで面倒を見ます。水生物園のサギたちも春から夏にかけて繁殖期を迎えました。
昨年は雌雄1羽ずつ、2羽のコサギが人工育雛で育ちました。現在は親鳥のペアと同じ部屋にいます。

昨年孵化したコサギのひな(2024年8月撮影)
コサギは孵化してから約1年で性成熟を迎えるので、この2羽はすでに成鳥(親鳥)とまったく同じ見た目をしています。そして生後1年目にして、早くも巣作りのような行動をするようになりました。

成長した若鳥(2025年7月撮影)
コサギの巣作りではオスとメスで役割が決まっています。オスが枝を運び、メスがその枝を使って木の上に皿状の巣を作っていきます。飼育担当者が試しにさまざまな長さの枝を園内で集めてコサギの部屋に入れてみたところ、オスは割りばしサイズの小枝から自身の背よりも長い枝まで、自分がくわえて飛べる範囲の枝ならどんな長さのものでも運んでいきました。

巣材となる枝
しかし、長い枝はバランスをとるのが難しいらしく、何度もくわえなおして安定させてから飛び立ち、メスのいる巣台まで運んでいました。
メスはオスが集めた枝を使って巣を作り始めますが、気に入らない枝は下に落としてしまいます。そのため巣台の下に大量の枝が落ちていることもありました。メスが気に入る枝が見つかるまで、オスはひたすら運び続けるのです。

若メスのもとへ枝を運ぶ若オス
また、井の頭自然文化園では今年、4か所で巣作りが見られました。まず1か所目は同じ部屋にいる成鳥ペアの巣です。このペアは奥の巣台の上で複数の枝を組み合わせたきれいな皿状の巣を作りました。

成鳥ペアのきれいな巣
他の3か所は昨年生まれの若い2羽が作ったものです。この2羽に出来るだけ巣作りの練習をしてもらうため、飼育担当者は巣材の枝を入れ続けています。2025年5月中旬から営巣行動が見られていますが、約3か月経った8月上旬になってもまだ巣は完成していません。
成鳥ペアの立派な巣に比べると、この2羽の巣は枝を数本置いただけの雑な作りなのがわかります。

昨年生まれの2羽の巣
今シーズン中に巣が完成することはあるのでしょうか? 訪れた際はぜひ若い2羽の巣作りの状況に注目してください。
〔井の頭自然文化園水生物園飼育展示係 町田〕
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