ニュース
白い池の正体
 └─2024/06/13
 井の頭自然文化園の水生物園にはアオサギ、コサギ、チュウサギ、ゴイサギ、ミゾゴイの計5種のサギがいます。サギたちの部屋の池にときどき白いものが浮いているのを目にします。ときには池全体が白い膜を張られたようになっていたり(写真1)、白い謎の塊がどさっと浮いていたり……(写真2)。

 水生物園にいる他の鳥、カモのなかまやタンチョウなどの池の水は透明のままなのに一体これはなんでしょう?

(写真1)池に浮かぶ謎の白い膜
(写真2)池に浮かぶ謎の白い塊

 サギにだけ見られる、池の白いものの謎を解くカギ、それはじつは羽にあります。

 鳥の羽にはいろいろな種類があり、正羽、綿羽、半綿羽、剛毛羽、糸状羽に加えて、サギのなかまは「粉綿羽(ふんめんう)」という、特殊な羽を特に多くもっています。粉綿羽は水をはじく効果があり、触ると羽の先端が崩れてパウダー状になります。羽づくろいをする時に、足の前側3本の指のうち中央の指についた特徴的な扁平でくし状の爪(写真3)を使って紛綿羽をこすり取り、全身にまぶすことによって、汚れや水を体につきにくくする仕組みがあります。


(写真3)コサギのくし状の爪

 サギ類では腹部の一部に粉面羽が密集していることが多く、採食による腹部の汚れをパウダーでからめ取ってきれいにする役割もあります。

 一方、同じ水鳥のなかまでもガンやカモなどは、尾羽の付け根あたりにある「尾脂腺びしせん」という器官から出てくる脂を全身の羽に塗ることで、汚れや水をはじいています。サギ類の他に、ハト類、インコ類などの鳥は尾脂腺の発達が悪く、かわりに粉綿羽で羽を汚れから守っています。

 また、鳥は換羽といって、古くなった羽が抜け落ち、新しい羽に生え変わることが一般的ですが、この粉綿羽は生涯伸び続け、生え変わることがありません。

 白い池の正体、それはサギが水浴びをしたときに先端が崩れ、流れ出ていった粉綿羽だったのです(写真4)。

(写真4)ゴイサギの水浴び

 ちょうど今の時期のように気温が高くなってくると、水浴びの回数も増えていきます。白い池を見てみたい、サギたちが水浴びをしている姿が気になるという方、今がベストタイミングです。ぜひ井の頭自然文化園にお越しください。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 田所夢衣〕

(2024年06月13日)



ページトップへ