井の頭自然文化園では先週(2007年12月上旬)、紅葉の見ごろを迎えました。色づいた葉をひろげた木々も、冬のきびしい寒さや乾燥から身を守るために葉を落とし、休眠に入るといよいよ冬の訪れです。
冬を目前に、毎年恒例の「雪吊り」と「霜除け」を日本庭園にこしらえ、冬構えをしました(写真上)。
本来雪吊りは、雪による枝折れを防ぐため、雪の多い地域で松に多くおこなわれます。金沢の兼六園が有名ですが、豪雪地帯では、柱から降ろした吊縄を直接各枝に結びつけ、雪の重みから枝を守る「りんご吊り」など、実用的なスタイルを特徴としています。
井の頭自然文化園の雪吊りは、鑑賞を目的とした修景物として用いられるため、「化粧雪吊り」手法を用いています。軸となる帆柱の頭には、留め飾りとして、藁の穂で編んだ「藁ボッチ」をかぶせます。下方の枝には、「バチ」と呼ばれるかんざし状の竹を、何本か適当な間隔で設置します。そのバチに棕櫚縄(しゅろなわ)をぐるりと配して「ぶち」をつくり、その「ぶち」に吊り縄を吊るのです。この手法は、円錐形の美が特徴です。
雪吊りの雰囲気をさらに引き立たせるため、隣には霜除けを作ります。本来、ソテツなど、寒さに弱い樹木を雪や霜から守るためのものですが、雪吊り同様、化粧飾りとしてこしらえています。
霜除けも幾つかの種類があります。当園では、藁を逆さに使う「巻き下ろし型」を用いていますので、藁の穂で編んだ雪吊りの「藁ボッチ」(ワラボッチ:写真上)と、藁の元側で編んだ霜除けの「藁ボッチ」(ウラボッチ:写真下)のちがいを楽しむことができます。
11月に松の手入れをおこない、藁の「袴」(稲藁の茎の根元のやわらかい部分)を取る「藁スグリ作業」、藁ボッチ編み、帆柱に吊り縄を仕込む作業等、手間ひまをかけてこしらえました。
冬の風物詩でもある雪吊りと霜除けは、3月の啓蟄前後までごらんになれます。ご来園の際は、日本庭園にぜひおいでください。
写真上:雪吊りと霜除け
写真中:藁の穂で編んだ雪吊りの「藁ボッチ」
写真下:藁の根元側で編んだ霜よけの「藁ボッチ」
〔井の頭自然文化園施設係 星野真一〕
(2007年12月14日)
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