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ネズッポとコチをくらべてみよう
 └─葛西  2007/11/02

◎「多分みなさんよく知っているけど、ちょっとややっこしくて、でも水槽でじっくり見てみるとなるほどハッキリする魚」の話

 “ネズッポ”という魚の名前を聞いても、「何それ?」と思われる方は多いでしょう。“ネズッポ”とは、スズキ目ネズッポ科の魚をまとめて呼ぶ名前です。ネズッポのなかまには“メゴチの天ぷら”として食されている有名な魚があります。しかし、メゴチという名の魚は別にいて、ネズッポ科ではなく、カサゴ目コチ科の魚なのです。

 さらに、ネズッポ科の中には、ネズミゴチとかヌメリゴチというように“コチ”の名がついているものいます。つまり、ネズッポのなかまは、コチのなかまと思われがちなのです。ちなみに、“メゴチの天ぷら”の正体は、このネズミゴチやヌメリゴチなどです。

 この2種類のちがいをハッキリさせるために、葛西臨海水族園「東京の海」エリアの「東京湾の漁業」水槽で、ネズッポ科のトビヌメリとコチ科のマゴチを見くらべてみましょう。いずれも水槽の砂底にいて、ちょっと扁平で細長い体型をしており、どちらも砂と同じような体色なので、混同されてしまうのも無理はありません。

 では、泳ぎ方はどうでしょう? トビヌメリは胸びれを細かく波うたせて、「スス、スススー」っと滑らかに泳いでいます。マゴチは体を砂にうずめてじっとしています。ときどき、体を左右に振ってすばやく移動します。

 頭の部分にも注目してみましょう。トビヌメリは“下向きのおちょぼ口”をしています。その口で砂をパクついた後、その砂を「サラサラー」と吐き出します。これは、砂の中にいるゴカイやエビなどの小さな生き物をより分けて食べているのです。一方、マゴチは“大きなうけ口”をしていて、目の前にやってきた魚などを一気に飲み込むことができます。

 暮らしている場所や見た目が似ているために混同されてしまう魚は他にもあります。水族館でじっくり観察することで、違いがはっきりわかります。ぜひトライしてみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕

写真上:トビヌメリ
写真下:マゴチ

(2007年11月2日)



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