「チョウ」と「ガ」の違いというと、みなさんはどんなところだと思いますか? 鱗粉の量でしょうか? それとも体や翅の色でしょうか? この質問をすると、一番多く返ってくるのが、止まるときに翅を開いているのが「ガ」、閉じているのが「チョウ」という答えです。
でも、それらは正解ではありません。一般的に言われている「ガ」と「チョウ」の見分け方はいろいろありますがどれも例外があり、はっきりと区別する方法はありません。つまり、「ガ」と「チョウ」は本質的には同じグループなのです。
これから紹介するイシガケチョウも、名前のとおり「チョウ」なのですが翅を開いて止まることが多いチョウです。
昆虫生態園に入って少し進んだら天井をご覧ください。まるで星のように、という例えは言い過ぎかもしれませんが、チョウが点々と天井のガラスに張り付いているはずです。そのチョウがイシガケチョウです。イシガケチョウ、別名イシガキチョウとも呼ばれ、漢字では石崖蝶、石垣蝶となります。このチョウの一番の特徴は、何といってもその翅の模様でしょう。白地に茶色のひび割れのような独特の模様は、これまでもっていたチョウのイメージとはあまりにかけ離れていて、思わず見入ってしまいます。英名ではcommon map(「よく見られる」「地図」(の模様のチョウ」)と呼ばれています。岩に止まっていると、背景と同化してしまい、見分けがつきません。それもそのはず、翅の模様が石の崖や石垣に似ていることがイシガケチョウの名前の由来だといわれています。
近ごろ500匹が羽化しましたが、成虫の寿命が短く、その数がどんどん減っています。しばらくするとあまり見られなくなってしまうかもしれませんので、昆虫生態園までお急ぎください。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 草野啓一〕
(2012年03月16日)
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