秋も深まり私は食欲の秋を楽しんでいますが、みなさんは行楽の秋を楽しみに、ぜひ葛西臨海水族園にお越しください。その際に観察していただきたい、一風変わった魚を今回はご紹介します。
その魚は「インド洋」水槽にいるヘコアユです。ヘコアユは太平洋西部とインド洋のサンゴ礁域の浅い海に、小さな群れを作って生息しています。日本では相模湾以南で見られます。体は細長く、そしてペッタンコです。体表は甲板と呼ばれる骨質の透明な板で覆われています。口はストローのような吻の先端にあり、動物プランクトンなどの小さな生物を吸い込むようにして食べます。
このヘコアユの面白いところは、その泳ぐ姿です。頭を下にして、縦になって泳ぎます。そのためか、ひれの位置も通常の魚と違っています。ぱっと見て一番上にあるひれは体の一番後ろに当たる部分ですが、じつは尾びれではなく背びれなのです。そして、そのすぐ下にあるのが尾びれです。このひれの位置関係が上手に逆立ち泳ぎをするために役立っているのかもしれません。
また、ヘコアユの薄いペラペラの体の形は、身を守るために役立ちます。敵が近付くと、その方向に背中またはお腹を向けて、まるで一本の線のようにしか見えないようにします。そうやって敵に見つかりにくくしているので、水槽の中でヘコアユが、サンゴや海草の間にススーっと入ってしまうと、その姿を見失ってしまうことがあります。さらにその薄い体で、ウニのなかまのガンガゼの長いトゲの間やサンゴの枝の間などに入り込み、敵から身を守ることもあります。みなさんも、水槽の中でかくれんぼをしているヘコアユを探してみてください。
写真上:海草の周りに群れるヘコアユ
写真下:ひれの位置(上から背びれ、尾びれ、臀びれ)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 雨宮健太郎〕
(2011年11月04日)
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