葛西臨海水族園で最近イソギンチャクの興味深い行動をいくつか目にしました。3回に分けてお伝えするシリーズの今回は2回目です。
2011年4月19日、お客さんに展示していない裏の予備水槽で、その出来事は起こりました。イソギンチャクを飼育している水槽の水面にピンク色の物体が浮いていたのです(写真)。
この水槽では能登半島以北の比較的深い海に生息するコイボイソギンチャクを2個体飼育しています。体を伸ばすと20センチメートル以上になる、わりと大きなイソギンチャクです。
水面に浮いていたピンク色の塊は、良く見てみると小さな粒状で、コイボイソギンチャクの一個体から出てきているようです。
イソギンチャクの卵は今まで見たことがなかったのですが、これは「産卵」だということに気付き、水面に浮いていた卵を顕微鏡で観察してみました。
拡大した卵は直径0.7ミリメートルほどの球状で、その薄いピンク色と真ん丸な形から、なぜか「おいしそう」と思ってしまいました。
コイボイソギンチャクの卵は、メスの体内でオスの精子と受精して、プラヌラと呼ばれる小さな幼生になって外に出てくるのが正常な状態だそうです。今回の卵は残念ながら発生が進むことなく、3~4日過ぎると水面ではじけてなくなってしまいました。
イソギンチャクの繁殖方法には、受精と産卵(幼生の放出を含む)がおこなわれる「有性生殖」と、自分のクローンを作って増えていく「無性生殖」があります。次回はこのクローンで増えるイソギンチャクの話です。
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「ある日、イソギンチャクが──1」
写真上:予備水槽で産卵したコイボイソギンチャク
写真中:水面にはピンク色の小さな卵が浮いている
写真下:顕微鏡で拡大した卵(直径0.7ミリメートルほど)
〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕
(2011年05月13日)