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刺すクラゲ、刺さないクラゲ
 └─葛西  2011/01/14

 今やクラゲといえば「癒し系」の生物として水族館で人気を集めているばかりでなく、ご家庭で飼育を楽しむ方もいらっしゃるようです。眺めることで心を和ませてくれる生物である一方、さわると刺される危ない生物としても広く知られています。
 しかし、今回ご紹介するカブトクラゲのように刺さない種類もいますので、からだのつくりや動きを見比べてみることにしましょう。

 日本の海には200種類以上ものクラゲがいますが、その多くは刺胞動物と呼ばれ、刺すクラゲのなかまです。葛西臨海水族園でいつも見ることのできるミズクラゲはこの刺すクラゲです。傘のまわりには細長い触手があり、傘のまん中からリボン状の器官(口腕:こうわん)が伸びています。触手や口腕には刺胞と呼ばれる装置がたくさんあり、触れると刺胞が刺さり毒が注入されるのです。クラゲはこの仕組みを使って餌を捕まえています。

 現在展示しているもう1種類のクラゲ、カブトクラゲは有櫛(ゆうしつ)動物と呼ばれ、刺さないクラゲのなかまです。カブトクラゲのからだにはミズクラゲと違い刺胞はありません。口のまわりは袖のようにとび出しており、その内側の粘膜で小さなプランクトンを捕まえて口まで運びます。

 水族園では1日3回、ブラインシュリンプという動物プランクトンを与えていますが、カブトクラゲの体はほとんど透明なので、胃の中に取り込まれた餌を見ることができます。

 有櫛動物の大きな特徴は、その名のとおり、櫛板(しつばん、くしいた)と呼ばれる泳ぐための運動器官があることです。光が当たると虹色に輝いて見える部分に、小さな櫛板がたくさん並んでいます。櫛板の一つ一つには非常に細かい毛がついていて、カブトクラゲはこの櫛板を動かすことによってゆっくりと泳ぎます。ミズクラゲが体全体を使って躍動的に泳ぐのとはまた趣が違い、その姿に見入ってしまうお客さんも多くいらっしゃいます。

 カブトクラゲは葛西海浜公園の「西なぎさ」で採集しました。毎年冬のこの時期に現れますが、体がとても柔らかくてもろいこともあり、あまり長く飼育できません。この時期限定のクラゲですので、ぜひこの美しい姿を見に来てください。

写真上:カブトクラゲ
写真下:ミズクラゲ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕

(2011年01月14日)



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