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毒をもつ生物(7)やっぱりおそろしいハコフグの毒
 └─葛西  2010/09/03

 ハコフグは、フグ目ハコフグ科の魚でフグのなかまです。フグといえば、強い毒で知られるフグ毒(テトロドトキシン)をもっていることで有名ですが、ハコフグのなかまは、筋肉はもちろん、皮膚や内臓も無毒です。

 ハコフグは、うろこや皮膚が固い甲羅状になった箱のようなからだが特徴です。これだけでも防御体制はかなり十分に見えますが、皮膚にはテトロドトキシンではなく、パフトキシンと呼ばれる毒があり、捕獲時などに刺激を与えられると皮膚からその毒を出します。何かに食べられそうになったときなどに、身を守るのに有効なのでしょう。

 じつはこの毒には苦い経験があります。以前、朝の見回りをしていて水槽をのぞいてびっくり。前日までは何ともなかった水槽内のほとんどの魚が死んでいたのです。死んだ魚の中にはハコフグのなかまのモーリシャスボックスフィッシュ(今は展示していません)もいました。なぜ、毒を出したのかはわかりませんが、モーリシャスボックスフィッシュ自身の毒が原因で、自分まで死んでしまったのです。ハコフグのなかまの毒については、あらかじめ警戒していたのですが、3,000リットルの水量があればだいじょうぶではないかと甘く考えていました。

 ハコフグは、たまに磯釣りなどで釣れることがあり、テトロドトキシンについては無毒なので食用にされることがあります。でも、九州を中心とした西日本では中毒例がわずかですが知られています。これは、パリトキシンという毒をもった生き物をハコフグが食べ、肝臓に毒が蓄積されていたことが原因で、同様のことがアオブダイやソウシハギでも知られています。

 フグ毒の心配はないハコフグですが、都道府県によっては、ふぐ調理師免許がないと調理できないのでご注意ください。

 「東京の海」の「伊豆七島」の水槽で展示しています。成長段階や雌雄によって色やもように違いがあります。水槽には2個体いて、顔や体型までずいぶん違い、それぞれオスとメスだろうと思われます。ちなみに「伊豆七島」の水槽は、これだけあれば大丈夫だろうかと思われる30,000リットルの水量です。

写真上:おそらくオス
写真下:おそらくメス

〔葛西臨海水族園飼育展示係 荒井寛〕

(2010年09月03日)



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