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ジュズカケハゼのメスの婚姻色
 └─井の頭 2010/04/16

 ジュズカケハゼは、全長5センチほどのハゼのなかまです。池や湖、河川の中流から下流にかけて、流れのゆるやかな砂泥底に生息しています。都内では、多摩川や荒川などで生息が確認されていますが、近年数が減り、東京都版レッドデータブック(平成19年度版)では、準絶滅危惧種に指定されています。

 井の頭自然文化園の水生物館では、シナイモツゴなどの希少な生物とともに、ジュズカケハゼを展示していますが、この時期、一部のジュズカケハゼに「婚姻色」(繁殖期に現れる体色)が見られます。他のジュズカケハゼにくらべて、2つの背びれ、腹びれ、尻びれが黒くなっている個体です。

 ジュズカケハゼの繁殖期は、東京では3月から5月ごろで、オスが泥底に穴を掘り、その穴の中にメスが産卵します。卵が孵化するまでの間、オスは穴の中で卵を守り続けます。他の多くの魚とちがうのは、婚姻色がメスにはっきりと現れ、メスがオスに対して求愛することです。魚の世界では、オス、メス両方に婚姻色が現れることはとくに珍しいことではありませんが、メスに目立った婚姻色が現れるのは珍しいことです。

 ジュズカケハゼのメスは、産卵シーズン中に数回産卵します。一方で、オスは穴の中で10日間ほど卵を守り続けなければなりません。そのため、巣穴を作っているオスをめぐって、メスどうしで争いが起こると考えられています。

 水槽の中では、メスがさかんにオスに求愛するようすが見られ、ときおりメスどうしで争う行動も目にします。野外での繁殖期を考えると、もう少しのあいだ、ジュズカケハゼのメスの婚姻色を見ることはできそうですが、なるべくお早めにご覧ください。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 中村浩司〕

(2010年04月16日)



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