ペリカン池には、モモイロペリカンとコシベニペリカンがくらしています。しかし、ここにはもう一種類、鳥がやってきます。それは、アオサギです。
アオサギは全長90~98センチ、翼開長175~195センチ。人間のおとなが両腕を広げた幅よりも大きく、日本産サギ類では最大です。
多摩動物公園の園内にあるアオサギの巣は推定約100個、約200羽のアオサギが住んでいる見積もられています。今の時期は、林の木々が葉を落としており、アオサギの巣がよく見えます。ちなみに、巣がよく見える場所はモウコノウマ展示場からサル山、そしてアフリカ園食堂までの一帯で、山の木々にたくさん営巣されています。
本来アオサギは、川の浅瀬や干潟、水田など、浅い水域で魚やエビ、カニ、カエルなどを捕まえて食べています。しかし、園内に住んでいるアオサギは、いつでも手っ取り早く手に入る餌、つまり、ペリカンに与えているアジを狙って、毎日ペリカン池に集まってきます。
ペリカン池は、深いところで水深約55センチあります。脚の長いアオサギにとって、池の底に沈んだアジを食べるのは難しそうですが、慣れとは恐ろしいもので、器用にアジを持っていってしまいます。
今はアオサギの繁殖期なので、集まってくる数も少なくありません。午後2時、ペリカンの餌の時間が近づくと、サバンナ内のケヤキの枝にアオサギがたくさん止まっています。
アオサギも飼育係とお客さんとの区別がつくらしく、飼育係がペリカンにアジを与えているあいだは遠くの木の上からこちらのようすをうかがっていますが、私たちが立ち去ると、ペリカン池を目指していっせいに降りてきます。
ペリカンとアオサギのあいだには特にトラブルは見られませんが、アジを横取りするアオサギは、私たちにとってあまり嬉しい存在ではありません。でも、来園するお客さんにとっては格好の被写体らしく、アオサギに向けてさかんにシャッターを切る音を耳にします。
この時期、アオサギの数はさらに増えていきます。アジを横取りされないためにも、飼育係vsアオサギとの攻防と駆け引きはしばらく続きそうです。
〔多摩動物公園北園飼育展示係 横田利明〕
(2009年01月30日)
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