フンボルトペンギンの飼育数がいちばん多い国は日本だということをごぞんじの方は多いでしょう。また、飼育しているだけでなく、多くの動物園や水族館で繁殖しています。しかし、ひなを見たことがある方は、あまりいないのではないかと思います。それはフンボルトペンギンが、外から見えない「巣穴の中」でひなを育てるためです。
フンボルトペンギンの親鳥の体には白黒はっきりとした模様がありますが、ひなは全身が短い灰褐色の羽毛でおおわれており、親鳥に似ても似つかないすがたです。しかも、体にくらべて足が非常に大きく、翼が地面近くまで垂れさがっています。
このように、ひなのすがたが一見不格好なのには理由があります。まず、ひなは、自分の頭上にある親鳥の口に向かって餌をねだらなければなりません。そのために自分の体をしっかり支える必要があるので、足がいちばん早く成長するのです。つぎに、巣立ちの際、安全な海へ逃げ込んでしっかり泳ぐ必要があります。ひなはそれまでに翼をちゃんと成長させておかなければなりません。こうした理由から、ひなはアンバランスなすがたをしているのです。
じつは今、葛西臨海水族園では、こうしたひなのすがたが簡単に見られます。今年はなぜか繁殖期がずれ、遅い時期まで産卵がありました。そして今も、子育て中のつがいが2組残っています。
通常、ひなは巣立つまで安全な巣穴の中で生活するのですが、今のこの暑さのために、ひなは「外界の怖さ」を気にする余裕もなく、巣穴から出て風通しのよい外側で過ごすことが多くなっています。ペンギンテラスの向かって右側の奥の方をさがしてください。灰褐色をした小さめのペンギンが見つかるはずです。
写真:巣穴の外に出ているフンボルトペンギンのひな
〔葛西臨海水族園飼育展示係 福田道雄〕
(2008年08月15日)
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