近年、地球温暖化の懸念とともに、北極圏や高地に生息する動物を守るための飼育技術、繁殖技術が求められています。
ライチョウは北半球の寒冷地や高地に生息する鳥ですが、暖かい低地では飼育が非常に困難です。上野動物園では、2008年6月27日から7月14日まで、ノルウェーのトロムソ大学に職員2名を派遣し、北極圏に生息するライチョウ類の飼育繁殖技術の研修を受けました。トロムソ大学では、北極圏に生息するカラフトライチョウとスバールバルライチョウの2種について、20年以上の研究実績があるのです。
帰国時、上野動物園の職員はスバールバルライチョウの卵23個をゆずり受け、日本に持ち帰りました。卵を孵卵器に入れて育てたところ、有精卵だった7個のうち5個が、2008年8月5日に孵化しました。性別はまだわかりません。スバールバルライチョウの人工孵化は、国内初の事例です。
日本のライチョウは絶滅が心配されています。ノルウェーからやってきたスバールバルライチョウは、日本のライチョウと同じ種の別亜種にあたります。今回の人工孵化の成功は、今後日本のライチョウを飼育し、保全するためにも、貴重な情報収集の機会になるはずです。
ひなを育てるために、上野動物園では特別な飼育箱、トロムソ大学と同様の配合飼料、初期のえさとして必要なスイバなど、以前から準備を進めていました。今後、ひなが順調に成長し、状態が安定したら公開する予定です!
(2008年08月08日)
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