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イワシャコの人工育雛
 └─上野  2008/07/18

 こちらのニュースでお伝えしたとおり、今年(2008年)3月、子ども動物園のモンゴルマーモット舎にイワシャコのペアがデビューしました。

 そのイワシャコ夫婦が、春から夏にかけての繁殖の季節を迎えました。2008年4月中旬から産卵が始まり、2~3日に1個の卵を産むようになりました。イワシャコはおよそ7~12個の卵を同じ場所に産み、数がそろうと温め始めます。これは、ひなをいっせいにかえすためです。かえったひなたちはすぐに巣から離れ、親鳥の保護のもとで育つのです。

 しかし、子ども動物園のイワシャコの産卵場所は、なんと毎回ちがっていたのです。展示場内に安心して巣作りできる場所がないのでは──と考え、数種類の隠れ場所を用意しましたが、なかなか一つの場所に産んでくれません。

 産み落とされた卵はいつか温める気になるのでは、としばらくそのままにしておきましたが、古くなり汚れていく一方……。これではせっかくの卵がムダになってしまいます。

 そこで、温めそうにない卵は孵卵器に入れて私たち人間が温めることにしました。しかしながら、イワシャコを人工育雛したデータが見つからなかったので、ほかのキジ類のデータを参考にしたり、先輩職員にアドバイスをもらったりと、手さぐりしながらの挑戦でした。

 何日で産まれるのかもわからないので、ドキドキしながら誕生を待ったところ、6月3日に最初のひながかえりました。孵化までの日数は23日間です。卵の重量は最初は約20グラム。孵化した薄茶色のひなの体重は約13グラムでした。

 その後も孵化が続き、現在11羽のひなを育てています。生命力とはすごいもので、3週間近く展示場で雨風に打たれていた卵でも、しっかり元気なひながかえりました。ひなは元気に育ち、最初に産まれたひなの体重はすでに 100グラムを超えています。一人前におとなと同じ鳴き方をし、砂浴びも大好きです。現在はバックヤードですくすく成長しています。

 ところが7月10日、お母さんであるメスが残念ながら死亡し、展示場にはオスが1羽残り、寂しくなってしまいました。ひなたちがもう少し大きくなったら展示場に放すとにぎやかになると思います。ひなたちのデビューまで、しばらくお待ちください!

写真上:生後2日齢のひな
写真中:イワシャコ親鳥(オス)
写真下:生後2週齢のひな

〔上野動物園子ども動物園係 高橋美紀〕

(2008年07月18日)



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