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シリーズ井の頭自然文化園のカエル No.06
 シュレーゲルアオガエル
 └─井の頭 2008/05/23

 カエルといえば鳴き声。みなさんはどんな声を思い出しますか? 「ケロケロ」とか「ゲコゲコ」などと表現されることが多いようですが、種類によってその声はじつにさまざまです。私がもっとも美しいと思うのは、今日紹介するシュレーゲルアオガエルの声です。まわりを新緑の雑木林に囲まれた田んぼで、よく響く軽やかな「コロコロコロコロ、ココココ」という声が、最初はかすかだったのが、田んぼからも周りの林からもこだまのように何重にも響き、やがて大合唱となっていくときのことを思い出すのです。

 ところが、声はよく聴こえるのですが、そのすがたを見ることはなかなかできません。ニホンアマガエルやトウキョウダルマガエルは、田んぼの畦を歩くとピョンピョンと飛び出してくるのですが、シュレーゲルアオガエルはめったにそのすがたを現わしません。畦の土の中や草の下をたんねんに探すと、土のくぼみや草陰にひっそりと隠れているのです。声は美しいのに、その存在があまり知られていないのは、このようにすがたを見つけにくいためかもしれません。また、体色が似ているニホンアマガエルと混同されているためかもしれません。

 シュレーゲルアオガエルは、低地から標高 1,500メートルの高地まで広く分布し、周りを雑木林に囲まれた谷津田などでよく見られます。体色は模様のない鮮やかな緑色で、土のような褐色になることもあります。オスは、サイズや体色が似ているニホンアマガエルに間違えられることがありますが、メスはひとまわり大きいため見わけることができます。

 繁殖期は4月から6月、田んぼの畦や池の岸に、白い泡に包まれた卵を産みつけます。すがたと同様、卵を見つけるのも簡単ではありません。土の穴やくぼみ、草陰などに隠すように産みつけられます。そして1~2週間で孵化したオタマジャクシは、雨とともに水中に流れこむのです。

 展示水槽の中では、動きが少なく、ペタッと葉っぱの上にはりついていることの多いカエルですが、鮮やかな緑色の体色や表情がかわいいからか、カエルの苦手な人にも人気があります。残念ながら、なかなか鳴いてはくれませんが、録音した鳴き声を館内では流しています(環境音響研究所・松浦肇氏提供)。また、この時期、田んぼでは生の美しい合唱を聴くこともできるでしょう。

〔井の頭自然文化園教育普及係 天野未知〕

(2008年05月23日)



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