ニュース
シリーズ井の頭自然文化園のカエル No.05
 トウキョウサンショウウオ
 └─井の頭 2008/05/16

 井の頭自然文化園のカエルシリーズ No.05は、カエルと同じ両生類のなかま、トウキョウサンショウウオです。国際カエル年はカエル類だけでなく、サンショウウオやイモリなど、両生類全体の保護を訴えています。トウキョウサンショウウオもカエル類と同様、かつては身近にいた生き物です。

 トウキョウサンショウウオは東北(福島県)から関東にかけて、そして愛知県の一部にすんでいますが、東京の多摩丘陵・狭山丘陵で採集された標本をもとに新種が報告されました。

 新種が発見された場所を基産地(基準産地)と呼びます。基産地にはとても大事な意味があります。たとえばトウキョウサンショウウオによく似たサンショウウオがどこかで見つかったとします。トウキョウサンショウウオによく似ているけれど別の種類かもしれない……というときは、すでに確実にトウキョウサンショウウオとわかっている標本と、あらたたに見つかったサンショウウオとを比べ、違いの有無を調べます。

 この場合、トウキョウサンショウウオを新種として報告する際に使われた最初の標本(模式標本と呼びます)とくらべるのが、動物分類の基本です。つまり、多摩や狭山の丘陵地にすむトウキョウサンショウウオは、この種を認める基準になるのです。この地域のトウキョウサンショウウオを大事に保護する必要性はそこにもあるのです。

 このことは、いくら数が減っていてもよその産地のトウキョウサンショウウオを持ってきてむやみに放してはいけないという主張につながりますし、すむ場所ごとの微妙な差が混血によってわからなくなるという問題にもつながります。野生生物の保護は、数だけたくさんいればよい、ということではないのです。

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 浅井ミノル〕

(2008年05月16日)



ページトップへ