ニュース
トウキョウサンショウウオの繁殖
 └─井の頭 2008/05/02

 両生類の飼育に力を入れている井の頭自然文化園水生物館で、トウキョウサンショウウオの繁殖に成功しました。

 トウキョウサンショウウオは、群馬県を除く関東地方と福島県の標高 300メートル以下の、おもに丘陵地に生息する、全長9~13センチ程度の小型のサンショウウオです。関東平野がおもな生息場所ですから、開発の影響を受けやすく、生息場所は狭められてきています。環境省のレッドリスト(2006)では、絶滅危惧II類(VU)、東京都のレッドデータブック(1998)ではBランク(絶滅危惧II類(VU)に相当)に指定されています。

 すでに卵をもった野生のトウキョウサンショウウオを採集し、それが飼育下で産卵することは珍しいことではありません。しかし、飼育下でずっと育てていた親が産卵に成功するのはとても珍しいことです。水生物館でも、ここ数年は毎年産卵が確認されていましたが、卵が発生したことはありませんでした。

 今回は、昨冬に屋外にあるビニールハウスの中にセットした水槽へ移動させ、冬の寒さ(0℃くらいまで下がりました)を経験させたことが、繁殖成功につなったのではないかと考えています。16年前の上野動物園水族館での成功例も、屋上で飼育していたことが、うまくいった要因だったようです。

 今回繁殖に成功した親は、10年近く飼育してきた個体です。2008年2月9日から17日にかけてバナナ状の卵のうが四つ産み出され、そのうち一つの卵嚢のごく一部で発生が進みました。3月26日~4月5日にかけて、17ミリほどの幼生が6個体孵化しました。現在は、5個体が35ミリほどに成長しています。

写真上:卵嚢
写真中:孵化後1か月の幼生。体長35ミリ
写真下:成体

〔井の頭自然文化園水生物館飼育展示係 荒井寛〕

(2008年05月02日)



ページトップへ