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ヤマドリの人工授精
 └─井の頭 2008/05/02

 2008年4月26日、井の頭自然文化園では今年3回目のヤマドリの人工授精をおこないました。

 ヤマドリは日本固有のキジのなかまで、本州、四国、九州に分布し、地域により五つの亜種にわけられていますが、生態や生息数など、くわしいことはあまり知られていません。

 そして現在、生息環境の変化による減少に加え、地域を考慮しない放鳥による亜種間交雑などの問題が生じています。このままでは詳しいことがわからないまま、貴重な日本の固有種が失われかねません。井の頭自然文化園では、日本を代表するこの鳥の5亜種の飼育展示に取り組んでいます。

 しかし、厄介なことに、ヤマドリは気性の激しい鳥で、動物園の一般的なサイズのキジ用ケージでオスとメスを同居させることはむずかしく、とくに繁殖期の同居は困難です。同居していなければ当然繁殖はできません。

 そこで、オスから人工的に精子を採取し、メスに注入する人工授精をおこなうことになります。井の頭自然文化園では、ヤマドリ研究家の伊達孝さんに指導していただきながら、人工授精による繁殖に取り組んでいます。

 2月ごろになると、オスは体を膨らませ、翼を羽ばたかせて「ドドド」という地響きのような音を出します。キジはケンケンと鳴きますが、ヤマドリ鳴かずにこのホロ打ちをします。繁殖期の行動です。そして、メスが卵を産み始めると人工授精に取りかかります。

 ヤマドリの精子はメスの体内でしばらく生きていますので1~2週間おきに人工授精をします。メスが卵を産んだ翌日が注入するのによいタイミングです。精子の採取は「マッサージ法」と呼ばれる、オスの後背部を刺激して射精させる方法でおこないます。

 私たち飼育係は直接見ることはもちろん、写真を撮ったりビデオを撮ったりして勉強しているのですが、伊達さんの技は素早く、あっというまに精子が出てしまいます。素早く精子を採取した後、希釈してメスの卵管に注入します。この後、生まれた卵を孵卵器に入れ、24日後のひなの孵化を待つのです。

 受精が成功しているかはまだわかりませんが、うまくいけば、結果を後日お知らせできると思います。

〔井の頭自然文化園飼育展示係長 小林和夫〕

(2008年05月02日)



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