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タチウオの夜釣り──葛西 2/20
 うす暗い水槽の中でギラッギラッと光る銀白色の刀のようなからだ、背びれを波打たせながらの立ち泳ぎ、おおきな口と鋭い歯。異様なそのすがたと、食べ物としての知名度が高いこともあってか、タチウオの展示は大人気です(タチウオのすがたは、四つ下↓のニュース写真をごらんください)。今回は、先週おこなったタチウオの釣り採集のようすを紹介しましょう!

 ところで、採集や飼育が簡単ではないといわれるタチウオですが、採集の際にはとりわけ次の2点がたいせつと思われます。一つは、なるべく浅いところにいるときに採集すること。深い場所から採集すると、水圧の変化によって浮き袋がふくれたり、ほかにも生理的にさまざまなダメージをうけます。浅ければ浅いほどよいい状態でとれるはずです。
 もう一つは、なるべく体がスレない、傷つかない方法で採集すること。タチウオのギラギラ光る体表はとても弱く、さわっただけでも傷ついてしまうのです。
 この二つの条件を満たす採集方法が、浅い水深からの釣りです。昨年、某釣りキチ職員がすばらしい情報をゲット!浅場でのタチウオ釣りを得意にしている釣り船を見つけたのです。そして先日、その情報にもとづいて今期3回目の採集を行ないました。

 夕方5時、釣り船に乗りこみます。釣ったタチウオを入れる水槽を設置し、釣り竿に特製のしかけ(釣針による傷をなるべく小さくするため、細く小さめの針を使い、「かえし」もつぶしてあります)を準備して、さあ、出港!(写真上)
 船頭は、タチウオの釣りポイントを知りつくしたベテラン。タチウオは、魚やエビなどの餌を食べるために、水深約 150メートルから約40メートルのあいだを鉛直移動することが知られています。ところが、船頭によれば、この時期、夕方から夜にかけて、この場所で、なんと水深10メートル以浅まで浮上してくるとのこと。船頭が魚探でタチウオの群れの位置を確認し、その水深に釣り糸を落とします。
 真っ暗になった海の上、みんながじっとあたりを待っているなか、「釣れた!」の声。暗い水面からギラリと光るタチウオがあがってきました。静かだった船上がいっきに活気づきます。ほかの職員も手伝って、タチウオの体が船べりや釣り糸に触れないよう、慎重に水槽まで運びます。釣針をはずすときも、けっして体には触れず、釣糸だけを持って素早くはずします(写真下)。
 その後、つぎつぎと釣れだし、釣れる水深も6メートルにまで浅くなってきました。釣れた水深と体長の記録、水槽内の水の流れや照明の調整、タチウオの状態のチェックなど、釣り以外の作業も分担しておこないます。こうして、夜9時、釣りを終了し帰港。すぐに車上の水槽にタチウオを移しかえ、水族園まで運びます。深夜12時、無事タチウオを水族園の水槽に収容し終えました。

 展示生物の採集に興味がある方は、水族園のオリジナルビデオ「採集と輸送」をお勧めします。情報コーナーでごらんください。
〔東京動物園協会調査係 天野未知〕

写真上:夕暮れの海へ出港。防寒対策もばっちり。
写真下:慎重に針をはずす。



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