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シリーズ井の頭自然文化園のカエル No.02
 ヤマアカガエルとニホンアカガエル
 └─井の頭 2008/04/11

 カエルシリーズの第2弾は、ヤマアカガエルとニホンアカガエルです。関東地方に住むカエルのうち、早く産卵するのがこの2種。図鑑などにはヤマアカガエルの方がやや高いところにすむ──と書かれていますが、標高が低い都内では両方の種が同じ場所にすんでいる場所があります。といってもアカガエルのなかまはあまり水辺に集まらず雑木林などにすむので、たくさんのカエルがいる場所でもないと親のカエルに出会う機会はそう多くありません。

 それではなぜ同じ場所にいることがわかるのでしょうか? それは早春の産卵の時期にわかります。同じ田んぼにそれぞれの種の卵が見られるのです。いろいろな図鑑にヤマアカガエルとニホンアカガエルの卵塊の区別の方法が書かれています。ところが現場で卵塊を見ると、これがむずかしいのです。

 「ニホンアカガエルの卵塊は硬くて水から持ち上げられる」と書いている本もあります、ところが産卵の直後ならともかく、時間がたつとそうはいかないらしく、ヤマアカガエルの卵塊と同じように、すくった手からすべりおちてしまうほど柔らかくなるようです。実際、どちらの種も卵が育ってくるのを見ていると、卵をとりまく寒天質がくずれてきます。

 アカガエルのなかまが住む狭山丘陵(「狭山」という名前から埼玉県内だけと思いがちですが、武蔵村山市や瑞穂町などの都内の丘陵地帯も含まれます)の生き物を調べている人に聞いても「産卵直後でないと区別は無理」「例外が多い」──と指摘されます。野生動物の生き方にはそういう柔軟さがつきまとうようです。ちなみに水生物館ではニホンアカガエルを見ることができます。

写真上:ニホンアカガエル
写真中:狭山丘陵で観察した卵塊。手前がニホンアカガエル、奥がヤマアカガエルと思われる
写真下:ニホンアカガエルの卵塊は水から持ち上げることができるということだが……

〔水生物館飼育展示係長 浅井ミノル〕

(2008年04月11日)



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