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シリーズ井の頭自然文化園のカエル No.01
 もっとも身近にいるカエル、アズマヒキガエル
 └─井の頭 2008/04/04

 今年(2008年)は、世界でカエルの窮状を伝え、カエルを救おうという「国際カエル年」です。関東で見られるカエルを常時8種類以上展示している井の頭自然文化園では、今週からシリーズで、飼育しているカエルを中心に、いろいろなカエルを紹介します。

 さて、トップバッターは、もっとも身近なカエル(多くの方にとっては唯一の身近なカエルかもしれません)、「アズマヒキガエル」です。ずんぐりむっくりの体と大きな頭、褐色の地味な体色をしていて「ガマガエル」とも呼ばれています。雨の夜、道路をノソノソと歩いていたり、悲しいかな、車にひかれてペチャンコになったすがたを見たことのある方もいるでしょう。また、この時期、公園の池や学校のビオトープ池では、真っ黒なオタマジャクシを見ることもできます。

 アズマヒキガエルは繁殖時期になると、池や水たまりに集まり繁殖します。関東ではまだ寒い2月中旬から3月中旬にかけて冬眠から目覚め、穴を掘って休みながら繁殖場所へ少しずつ移動することが知られており、また自分の産まれた池にもどって繁殖するという興味深い行動も研究されています。オタマジャクシから変態し、小さなカエルとなって上陸した後にたどった道筋を覚えているというのですからびっくりです。

 アズマヒキガエルは本来ならば山や田んぼなどでくらしていますが、都会の公園や人家の庭先などでもくらすことができます。私たちのまわりからさまざまなカエルがすがたを消していくなかで、アズマヒキガエルだけが唯一、都会の私たちの近くで、たくましく生きているのです。しかし、繁殖場所がなくなったり、移動中に車にひかれたりと、そのくらしも安泰ではありません。いつまでも身近なカエルであってほしいものです。

 今、井の頭自然文化園本園の熱帯鳥温室の前の池では、大きな池一面に、アズマヒキガエルのオタマジャクシを見ることができます。また、じつは水生物館の、コイやモツゴ、カイツブリやヤマセミが展示されている「近年の井の頭池」の水槽にも1匹のアズマヒキガエルがくらしているのです。水槽にむかって左側奥がポイントです。ぜひ、さがしてみてください。

写真上:アズマヒキガエル成体
写真中:アズマヒキガエルの幼生(オタマジャクシ)
写真下:車にひかれてしまったアズマヒキガエル

〔井の頭自然文化園教育普及係 天野未知〕

(2008年04月04日)



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