日本が海に囲まれているからなのか、日本人は他の国の人よりも水族館好きでは?と感じます。そんないわゆる「通」なお客さんの多い日本の水族館は、それぞれ特徴を出そうとがんばっています。で、葛西臨海水族園の特徴は、やっぱりマグロの群泳! そして忘れちゃならないのが「世界の海」エリア。地球上のさまざまな海の生物たちを飼育・展示しているこのエリアは、まさしく「通好み」。中には世界唯一の展示だってあるのですから。
そんな世界各地の生物たちが、どのように葛西臨海水族園にやってくるのかごぞんじですか? 購入したり、海外の水族館と交換したり、ルートはさまざまですが、職員が海に潜って採集してくる場合も少なくないんです。
昨年(2007年)11月におこなったメキシコ出張もその一つ。目的地は世界一長い半島として有名なカリフォルニア半島の南端近く、ラパスという町です。ハゲ山にサボテンが生え、コンドルが舞う荒涼とした大地とは裏腹に、世界屈指の豊かな生物相をほこるコルテス海。そこからやってきたのは、ダイバーにも大人気のジョーフィッシュ(アゴアマダイ)のなかまの大型種、ファインスポッテッドジョーフィッシュです。
このファインスポッテッドジョーフィッシュ、他のアゴアマダイのなかまにくらべると、おおらかな性格です。さすがアミーゴ(友だち)の国、メキシコ出身。だから採集もいたってスムーズ。指でちょっとくすぐっただけで巣穴から出てくる個体もいたくらいです。
大変だったのは日本までの空の旅です。とにかく地球の裏側から当園においでいただくわけですから。もちろん最短時間で届く飛行ルートを確保。飛行機への積み込みも時間ギリギリまで待つんです。なぜかって? それは生物の輸送に使う海水を搭乗直前にすべて入れ替えるためです。
ルートの関係でその日は朝の3時から作業を開始しました。入れ替える海水は、前日汲んできた沖合の澄んだ水です。そんな手厚いケアを受けながらメキシコを旅立った魚たちは、約40時間後、無事に水族園までたどりつきました。
こうして国内外から集まってくれた「海の親善大使」に敬意を表し、ぜひみなさんもさまざまな海に思いをはせてみてください。そしてこの大使たちが暮らす海が、かけがえのないものであることを感じていただけたらと思います。
写真上:貝殻を運んで巣穴整備中のファインスポッテッドジョーフィッシュ
写真中:日本に輸送するまでのあいだ、採集した生物は海中の網かごの中に。
写真下:荒涼としたサボテン山が広がるラパスの風景
〔葛西臨海水族園調査係 増渕和彦〕
(2008年01月04日)
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