多摩動物公園の昆虫園では、外から採集してくるのではなく、代々繁殖を続け、「累代飼育」している昆虫もたくさんいます。タイワンクツワムシもそのひとつです。
「台湾」と名がつくものの、タイワンクツワムシは台湾だけでなく、東南アジアに広く分布し、日本では本州の太平洋岸(伊豆半島、紀伊半島)、沖縄の暖かい地方などで報告されています。年に1回発生し、成虫で越冬することも確認されています。
昆虫園では飼育環境を「常夏」の状態にすることで、年に2~3回孵化させています。その結果、一年中成虫を展示することができるのです。
昆虫生態園の一般昆虫展示エリアでは、ゴキブリを展示した「ゴキブリ百科」のつぎに「夜の昆虫」コーナーがあり、秋の鳴く虫の代表ともいえるスズムシやマツムシといっしょに、タイワンクツワムシがギーッ、ギーッ、ガシャガシャとやかましく鳴いています。しかし、ここまで行きつけず、「ゴキブリ百科」の手前でUターンされている人もいるので残念です。
この秋も、恒例の「秋の鳴く虫展」(昆虫園本館2階)が2007年9月6日から始まりました。関東近辺で採集されたおなじみのクツワムシも、照明で昼夜のタイミングを逆転させてあるため、夜と思って鳴いています。さまざまな秋の昆虫の鳴き声を比較するには、年に一回の「鳴く虫展」が最適。お聞きのがしなく。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 駒谷良平〕
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