現在多摩動物公園ではタガメやゲンゴロウを展示していますが、その多くは昨年(2006年)に生まれた個体です。では展示の裏側では何を飼育しているかというと、その個体の子どもにあたる、今年生まれた個体を飼育しています。
水生昆虫は水の中が得意そうに見えますが、意外なことに、おぼれてしまうことも多いのです。幼虫の時期はさらにその傾向が強く、水質の変化にも過敏で、ちょっと水が汚れていたり、ほんの数センチ水深が深かったりするだけで溺れてしまうほどデリケートです。そのため、孵化してから成虫になるまでの期間、ほとんどの水生昆虫は裏側で飼育しています。
幼虫たちのすがたは、たとえばタガメやタイコウチは「不完全変態」と呼ばれるなかまなので、生まれたときから親の面影を残しています。食べ物に関して、もほとんど成虫と変わりません。
しかし、「完全変態」であるゲンゴロウやガムシのなかまはというと……。可愛らしさ?のある親とつながりがあるとは、とうてい思えないすがたをしています。とくにガムシは、おとなしい成虫とのギャップに驚かされます。
自然下における水生昆虫たちの産卵・孵化時期は、だいたい5月~8月ですが、多摩では5月に多くの水生昆虫が産卵しました。約2か月かけて成虫になるので、今月(8月)までに成虫になっている個体もありますが、今月も産卵しつづけているミズカマキリやタイコウチなどは、まだ小さい幼虫を裏で飼育しています。
秋になると世代交代の時期です。見た目では違いがわからないかもしれませんが、新成虫たちと入れ替わっているのです。
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 渡辺良平〕
写真上から:
タガメ
ゲンゴロウ
タイコウチ
ガムシ
ミズカマキリ
(2007年8月24日)
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