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夏だから、ゾクッ!?とする生き物の話
 └─葛西  2007/07/20
 雲の合間から差しこむ陽の光が蒸し暑さを感じさせる今日このごろ、葛西臨海水族園の「渚の生物」エリアを歩いていると、岩の上をワサワサッと動く生き物に目がとまります。そう、夏の海辺の定番、フナムシがいるのです。

 磯や港の岸壁などを集団で這い回るそのすがたに、思わず身を引いてしまうかもしれません。しかし、このまま引き下がるわけにはいきません。そっと近づいて、じっくり観察してみることにしましょう。

 長い触角を2本、ときおり小刻みに動かしているのは、あたりをさぐっているように見えます。動き回るための脚は7対、計14本もあるので、フナ「ムシ」とという名前がついていても、昆虫のなかまではないことがわかります(昆虫の脚は3対、計6本です)。フナムシはカニやエビと同じ「甲殻類」と呼ばれるグループに含まれる生き物なのです。

 からだの色にも注目してみましょう。全体的に黒っぽい色をしていますが、周囲の色にあわせて変化させることもできます。たとえば、黒っぽい虫かごと白っぽい虫かごを用意し、それぞれにフナムシを入れて1時間後に見てみると、フナムシのからだの色の濃淡に差が見られます。こうした体色変化は保護色となり、鳥などの敵から身を守るために役立つと考えられます。

 さらにたくさんのフナムシを見ていくと、からだの前後で色がちがうものが見つかります。これはからだ半分の殻を脱ぎ捨てたところで、しばらくすると、残り半分を脱ぎ捨てます。このように、脱皮を2回にわけておこなうことで、からだのカルシウム分を節約しているといわれています。つまり、片方の殻を脱ぐときは、カルシウム分をもう片方に集めておくわけです。

 いかがですか? この夏、海辺でフナムシをじっくり見たくなったでしょうか? 「うーん、でもやっぱりニガテだなあ」という方には、ダンゴムシをオススメします。さわるとコロッと丸まる、子どもたちにも大人気のダンゴムシ。フナムシにとても近い種類なので、からだのつくりもよく似ていますし、脱皮の方法も同じです。“フナムシ観察への道”は、まずは身近なダンゴムシから始めてみましょう。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 金原功〕



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