昨日(2007年5月17日[木])の午前11時45分ころ、上野動物園の子ども動物園でのできごとです。ボランティアの方が「ヤギがたいへん!」といって走ってきました。担当者がかけつけるとと、トカラヤギのお母さん「モモ」のからだから、小さな足が出ています。
赤ちゃんの足のひづめは「蹄餅」(ていぺい)と呼ばれる、白くて柔らかい、餅のようなものでおおわれていました。赤ちゃんは生後すぐ立つことができますが、そのため、赤ちゃんのひづめは最初から硬くできています。このひづめがお母さんの子宮や産道を傷つけないよう、蹄餅がひづめのまわりをおおっているのです。赤ちゃんが立つと、蹄餅はすぐに取れてしまいます。
母親のまわりではお客さんがはらはらしながら見まもっています。しかし、ベテランの飼育係員が赤ちゃんの足をひっぱり、手助けをして、モモは無事に赤ちゃんを産みました。お客さんから拍手がわきおこります。生まれた子どもは、かわいたタオルでふいてやりました。
しかし、もう1頭生まれるかもしれないので、わらをあつく引いた小部屋に母子を入れてやり、落ちつかせるために親子だけにしておきました。それから約1時間。そっとようすをうかがいに行くと、2頭めが産まれていました! 赤ちゃんの毛はぬれていましたが、お母さんがなめてくれたらしく、きれいになっていました。
お母さんの「モモ」は2歳。これまで1腹2頭の子どもを産みました。お父さんは「ゴハン」。同じく2歳です。2頭とも鹿児島市の平川動物公園から、生まれてすぐにやってきました。
赤ちゃんは2頭とも顔に白い毛があります。先に生まれた赤ちゃんはメス。体重は2.05キログラム。からだにも白い毛があります。あとから生まれた赤ちゃんはオスです。体重は2.35キログラムで、からだは薄茶色をしています。
親子そろってなるべく早く日光にあてたいので、およそ1週間後(5月24日ごろ)には、外に出して、みなさんの前にお目見えします!
なお、動物園では、各動物を管理するために、1頭ずつカードを作って記録しています。その「戸籍」づくりを担当するのが「調整係」。動物が生まれたとき、飼育担当者は「担当動物増加票」を調整係に提出します。この書類を提出するとき、飼育担当者のよろこびはひとしおです。
写真上:生まれたばかりの赤ちゃんと母親
写真下:担当動物増加票
〔上野動物園子ども動物園係長 高藤彰〕
(2007年5月18日)
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