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コウイカは海のカメレオン!?
 └─葛西  2007/05/04

 2007年4月25日、葛西臨海水族園では「東京の海」エリアの「東京湾にもいるこんな生物」水槽で、コウイカの展示を再開しました。

 イカは、巻貝や二枚貝と同じく、軟体動物のなかまです。軟体動物は名前のとおり骨格をもたず、軟らかい体をしていますが、体内で炭酸カルシウムを分泌し、外敵から身を守るための殻を作ります。

 「イカは軟体動物なのに殻がないよ?」と思うでしょう。じつは、体の中にちゃんと殻をもっているのです。イカの殻は、海ですばやく移動するときにじゃまになるので退化してしまった、と考えられています。イカを食べると、体の中から細い透明な軟骨のようなものが見つかりますよね。これが貝殻のなごりです。コウイカもやはり、「イカの甲」と呼ばれる貝殻をもっています。

 ふだん海の底付近でくらしているコウイカは、身を守るため、体色を海底に似た色に変化させます。体表に「色素胞」(しきそほう)と呼ばれる細胞があり、この細胞が広がったり縮んだりすることで、体色が変化するのです。また、オスがメスを誘うときや、興奮したときにも体色はすばやく変化します。

 昨年(2006年)の4月中旬、この水槽内でコウイカの産卵が見られました。産卵後、親は卵の表面に砂をまぶし、魚などの敵に食べられないよう、カモフラージュをほどこします。

 今回展示しているコウイカも、産卵シーズンをむかえており、じつはすでに1組のカップルが成立しているんです! 展示水槽では、寄り添うように泳いでいる2尾が見られます。体が大きく、胴の幅が広いほうがメス、体が小さく、少しスマートなほうがオスです。とても仲よさそうに、いつもいっしょに泳いでいます。水槽には、産卵場所としてプラスチック製の海藻をぶらさげました。

 葛西臨海水族園におこしの際は、コウイカが砂の上ですがたを隠す行動や、オスがメスに自分をアピールするときに見られる、カメレオンのような体色の変化をぜひ観察してみてください。また、このカップルが無事に産卵できるよう、そっと見守ってください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 鈴木聡子〕

写真上:コウイカのカップル。左メス、右オス
写真下:奥メス、手前オス

(2007年5月4日)



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