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アマモ場の小さな生き物たち
 └─葛西  2007/04/27

 「アマモ」をごぞんじでしょうか。入江や内湾の、浅くて波の穏やかな、砂泥質の海底に群がって生える植物です。すがたは地味ですが、花をつけ、種もできる、海中に生える草の一種です。

 ニラのようなかたちをした、薄くて細長い葉が海底から立ち上がり、砂泥の中にはりっぱなヒゲ根を備えた、節のある根っこがあります。アマモはこの根に栄養をためています。根をかじるとほのかに甘いので、「甘い藻」から、甘藻(アマモ)と名がついたと言われています。

 アマモの群生地が“アマモ場”であり、かつては日本中で見られました。葛西臨海水族園の目の前の海も、昭和30年代まではぎっしりとアマモが生えていたそうです。しかし、その後は全国的に衰退してしまい、現在、東京都の海面にはまったく残っていません。

 さて、このアマモ場は「海中林」とも呼ばれており、魚やエビ、カニ、貝など、海の生き物の保育場となっています。また、海の汚れのもととなる栄養分を吸収して水をきれいにしたり、二酸化炭素を吸収して酸素を放出したり、海中ではとても大切な役割をはたしています。

 アマモ場には特有の生物がいるため、生物の宝庫となっています。水族園では、「東京の海」エリアの中ほどに「アマモ場」という少し大きな水槽があり、かつての葛西の海を再現しています。

 また、その2階にある小さめの水槽「アマモ場の小さな生き物」では、アマモ場にくらす小さくてかわいらしい生物を展示しています。まず、魚の一種であるタツノオトシゴ、そしてヨウジウオ。どちらもうまくアマモにまぎれ、よく見ないと見つけられません。無脊椎動物ではツノモエビ、ヒメイカ、チグサガイなど。ツノモエビは色も形もアマモそっくりで、おまけにアマモの葉にうまくくっついているので、見つけるのが大変です。ヒメイカはこれでも大人のイカ?と思ってしまうくらい小さなイカのなかまです。アマモの葉にくっついていたり、アマモのまわりをひょこひょこと泳ぎ回ったりしています。チグサガイはアマモの葉の上を這いまわる小さな巻貝で、葉の掃除をしてくれます。

 ゴールデンウイークはこの水槽の前で、職員やボランティアスタッフが解説をする予定です。何種類の生き物を見つけられるか、ためしてみませんか?

写真上:展示水槽全景
写真中:ヨウジウオ
写真下左:ヒメイカ
写真下右:タツノオトシゴ

〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕

(2007年4月27日)



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