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ふしぎなアイアイの中指──上野 2007/03/30

 国内では上野動物園だけにいるアイアイ。マダガスカルに生息します。手には5本の指がありますが、中指と薬指が長く、とくに中指はヨウジのように細いのです。

 アイアイは、この中指で木の表面をトントンと慎重にたたき、その反響音を手がかりにして、木の中にいる虫の幼虫のありかを正確につきとめます。幼虫を発見したら、前歯で穴をあけてから長い中指をさしこみ、引っぱりだして食べます。マカダミアナッツをあたえると、小さな穴をあけて中身をほじくり出しますし、オレンジをやると果肉をきれいに食べ、薄皮だけを残します。

 そんなアイアイの「虫ほじくり」をみなさんにも見ていただこうと、毎日午後3時30分、屋外放飼場にいるフアーヴィ(メス)に特別容器でえさをああたえています。この「おやつの時間」には、オリの外に透明のパイプをつるし、中にえさを入れます。えさの中身は、葉食いサル用のペレットとオートミールをふやかしてハチミツをくわえ、ブドウ虫(ブドウスカシバという蛾の幼虫)やミールワームをトッピングしたものです。

 透明パイプには穴を開けてありますので、このおやつの時間、みなさんも運がよければ、アイアイが中指を穴に挿しこんで、ミールワームを器用に1匹ずつひっかけて口に運ぶようすが見られます。その奇妙な指の正確な動きは、見なれている私でも、つい見とれてしまうほど。

 ただ問題は、彼女がかならず餌を食べに出てきてくれるわけではないことです。放飼場は屋外にありますが、黒いシートで全体を覆い、なんとか昼夜を逆転させているのですが、どうしてもまわりが明るいため、完全な明暗の差をつくりだすことができません。なにかをきっかけに、アイアイの体内時計が毎日1~2時間ずつずれてしまい、開園時間中にもかかわらず、寝てしまうことがあります。

 気まぐれフアーヴィは、起きているのになかなか来ないときもあるし……まったく飼育係泣かせです。毎日、「今日は見ていただけるだろうか」と、ドキドキの連続で、身も細る──いや、毛も抜ける思いです。

 残念ながらフーアヴィの虫ほじくりをごらんになれないときは、東京ズーネットBBの動画「アイアイの『おやつ』の時間」(2006年11月)をごらんください。

 また、今月(2007年3月)から、室内にいるマミルアとソア(フアーヴィの父と母)の部屋でも、同様の透明パイプをつるしています(やや見づらいかもしれません)。でも、この2頭もすでに寝てしまっていることがあります。そのときはもう、ゴメンナサイです。

 上野動物園にぜひ見に来てください!と声を大にして言いたいところですが、見られないこともあるので、小さな声で「来て下さい!」。

〔上野動物園飼育展示係 細田孝久〕

(2007年3月30日)



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