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細長~くて、神経質なアオヤガラ──葛西 2007/03/23

 葛西臨海水族園でいろんな種類の魚を飼育していると、種類によって、それぞれ性格があることがわかります。新しい水槽の環境にすぐなじむ魚や、人なつっこい魚、おどおどしてなかなか餌を食べにこない魚。群れを好む魚がいる一方で、縄ばりをつくる魚などなど……。今回みなさんに紹介するのは、神経質な魚の一つ、アオヤガラです。

 アオヤガラは、本州中部より南のあたたかい海に広く分布し、全長およそ1メートルの大きさになる魚です。おもに沿岸の比較的浅い場所に生息します。大きさ鉛筆くらいの幼魚のときには、「しおだまり」のような浅い場所で見られることもあります。

 目が大きく、口も体も細長いので、ほかの魚と簡単に区別できるでしょう(写真上)。じつはこの細長い体、餌を食べるときに役立ちます。前から見ると小さく丸く見え、相手からは見つかりにくいのです(写真下)。アオヤガラは大きな目で餌生物を見つけると、食べられる距離までゆっくりと注意深く近づいてから、全身をくねらせるようにダッシュし、餌を水ごと吸いこんで食べます。

 さて、海ではさまざまな餌生物を食べていたアオヤガラですが、水族園にやってきた個体はなかなか餌を食べてくれません。そこで最初は、生きたエビや魚をあたえます。その後、サクラエビやイカの切り身、キビナゴといった、動かない餌に徐々にならしていきます。

 しかし、餌を食べるようになり、展示した後でも苦労はつづきます。というのも、先ほどご紹介したように、アオヤガラは餌を見つけてから食べるまで、少々時間がかかるからです。水槽にはすでに先住の魚たちがいて、飼育係が与えた餌を、泳ぎの速い魚たちが先に食べてしまいます。

 そこで、アオヤガラに餌を食べさせるためには作戦が必要です。まず、アオヤガラから離れた場所でほかの魚に餌をあたえ、アオヤガラ以外の魚が集まってきたすきに(ほかの魚に気づかれないように!)餌を与えるのです。

 そのほか、治療用の薬品に敏感だったり、病気にかかりやすいなど、アオヤガラは長期展示がむずかしい魚です。しかし、ちょっと変わったかたちをしているためか、来園者に人気のある魚なので、少しでも長く展示したいと思っています。アオヤガラは、アオウミガメやウメイロモドキなどといっしょに「東京の海エリア」の「伊豆七島の海4」水槽で展示しています。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 橋本浩史〕

(2007年3月23日)



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