3月6日は啓蟄でした。「大地が暖まり、冬眠をしていた虫が穴から出てくるころ」とされています。これに合わせるように、熱帯鳥温室前の池にはヒキガエルが産卵のために集まってきました。漢字で書くとわかるように、ヘビもカエルもトカゲもタコも、鳥と獣以外の動物はみな「虫」だったのです。
ヒキガエルは比較的乾燥に強く、都心の公園や民家の庭などでも生活できるので、垂直面も登れてマンションのベランダでも暮らせるアマガエルとともに都市部に残る最後のカエルです。しかし、産卵の際にはどうしても水辺が必要なので、この時期ヒキガエルは冬眠から目覚めて池に集まります。このとき、数キロ歩く例もあるそうです。産卵後は再び冬眠にもどる「二度寝」をしますが、温室前の池の縁は垂直の壁なので、手足に吸盤のないヒキガエルは登れません。そのため、施設係がループ状の階段を作りました。ここ数日、階段の下にヒキガエルが集まっています。耳を澄ますと、顔に似合わぬ「クックックックッ」という可愛い声が聞こえるかもしれません。
ヒキガエルの卵は寒天質のヒモ状をしています。ここからかえったオタマジャクシは真っ黒で小さく、初夏に1センチほどの小さな小さなカエルになって上陸します。このミニサイズのカエルが、地上で何年も過ごして大きなヒキガエルになり、運がよければ10年以上も生きるのです。
写真上:ヒキガエルご一行さま用階段
写真下:交接中のヒキガエル
(2007年3月9日)
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