ニュース
森の動物ニホンリス展──井の頭 2007/03/02

◎文化園四季折々

 ニホンリスは、日本産動物の飼育に力を入れる井の頭自然文化園の代表動物の一つです。園内の「リスの小径」では80頭以上のリスを間近で観察できますが、1985年に文化園で集団飼育を始めるまで、日本の動物園ではニホンリスの長期飼育や繁殖の記録はほとんどありませんでした。また、野生ニホンリスの生態は、まだまだ多くの謎が残されています。こうしたニホンリスの本当の姿を知っていただくため、当園では特別展「ニホンリスを知っていますか?──森の動物ニホンリス展」を2007年2月20日から開催しています。

 特別展は、リス科動物の研究団体「リス・ムササビネットワーク」との共催で、各地で活躍中の研究者や写真家の方々にご協力をいただいています。豊富な写真は、長野県でニホンリスを撮影しているカメラマン加藤静さんの作品。冬眠せずに雪の中で暮らすニホンリスの冬から春の姿をご覧ください。解説パネルや骨格標本でニホンリスの姿をお伝えするほか、巣や食痕などのフィールドサインは野外でリスの生活を探る際の手がかりになるはずです。「リスのお手玉」は、日本に住む6種のリス科動物を、実物とほぼ同じ大きさ、同じ重さの「お手玉」で表現。リス研究者の方のお母様の手作りです。手で感触を確かめられるニホンリス、エゾリス、タイワンリスの仮剥製とともに、「体験できる展示」をめざしています。

 おそらく日本初の試みになるのが、リス巣箱のリアルタイムモニターです。園内のニホンリス繁殖棟の巣箱に暗闇でも見える赤外線カメラを取り付け、ライブ映像を資料館まで無線中継。昼間は巣材をくわえて巣箱を出入りするリスの忙しそうなようすが見られますし、夕方になると丸くなった寝姿もわかります。繁殖棟のリスは雌雄のペアで個室に入っており、2~6月がニホンリスの繁殖期なので、うまくいけばリスの出産や子育てが観察できます。

 子供に人気なのが、「リスに変身」コーナー。リスの顔出しパネルや、耳と尻尾をつけてリスになれる変身キットもあります。ここにあるクルミの模型は、「もしも人間がリスの大きさだったら、クルミはこのくらいの大きさ、重さになるはず」という発想で作られています。意外に重いクルミを口にくわえて、猛スピードで走り回るリスの能力を想像してみてください。

 井の頭自然文化園のあたりは、かつては武蔵野の雑木林でニホンリスもたくさん住んでいました。今でも高尾山や奥多摩にかけてリスがいますが、その生息域は年々狭くなっています。九州では絶滅してしまった可能性が強く、西日本でもリスの姿はなかなか見られなくなってきました。特別展や「リスの小径」で、もっともっとニホンリスについて知ってください。

〔井の頭自然文化園教育普及係 井内岳志〕

写真上:会場風景
写真中:リスの巣
写真下:リスのお手玉

(2007年3月2日)



ページトップへ