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オランウータン「ミンピー」生後2か月
 ──多摩 2007/02/16

 昨年(2006年)12月10日、多摩動物公園でオランウータンの赤ちゃんが誕生。「ミンピー」と命名しました。2007年1月27日、室内展示場にデビューし、母親のチャッピーといっしょに元気なすがたを見せてくれています。生後2か月間で大きさにそれほど変化はないのですが、体つきはずいぶんしっかりしてきました。これまでの経過をご報告します。

 子育てじょうずなチャッピーが母親だったので、私たちもあまり心配はしていなかったのですが、やはり精神的に落ち着けるようにと、使い慣れた自室を出産用に準備しました。今回は試みとして、チャッピーの息子、6歳のポピーを隣室に入れ、分娩を見せるようにしました。

 12月10日夕刻、軽い陣痛から出産まではあっという間でした。チャッピーは高さ約1メートルのケージに両手でつかまり、おしりに手を差しのべ、生まれてくる赤ちゃんを上手に受け止めました。その後、子どもを大事そうにベッドに運び、片時も離しません。すぐに授乳も見られ、私たちもほっとしましたが、びっくりしたのはポピーです。母親の部屋の床が血だらけになり、しかも母親は、今までいなかった赤ちゃんを大切そうに抱いています。私たちが近づいても、ポピーはじっとしたまま、不安な表情でした。

 出産後、チャッピーに胎盤を食べる行動は見られず、移動の際は、提灯のように持ち歩いていました。太かったへその緒も、1日経つと細長い干物のようになり、2日めには歩いている途中で取れてしまいました。チャッピーは、とれたあとをふしぎそうに眺めていました。臍帯の長さは43センチ、胎盤は直径16センチ、重さ270グラムです。

 母親は私たちにミンピーを見せにくるようになりましたが、ポピーが近づくと、しっかりガードして触らせません。生後1週間もすると、ミンピーは光や音に対してさまざまな反応を見せるようになりました。また、母親は私たちの前でも、よく授乳をしていました。

 一方、ひとりになったポピーは、屋外の放飼場に単独で出るようになりました。数か月前まで、いつも母親のすがたを気にしていたのですが、今回の出産を機に、ずいぶん成長したようです。また、少し離れたところにいる高齢のメス、モリーは、毎日室内で多彩な絵画作品の制作にいそしんでいるのですが、チャッピー出産のころは、2日間にわたって赤一色の絵を描いていたのには、偶然とはいえ、びっくりしました。その他のオランウータンはいつもどおりでしたが、赤ちゃんのなき声で出産のことを知ったようです。

 2007年1月7日、チャッピーの母親であるジプシーにミンピーを面会させました。ジプシーは孫のミンピーを見て、「ウッツ、ウッツ」といった声で話しかけていました。ジプシーは、ケージをはさんで10センチぐらいの距離から、ミンピーをしばらく眺めていました。

 ミンピーが泣くと母親はよくあやしていましたが、1月に入って、ミンピーの両手を持って「高い高い」をするようになりました。狭い部屋に1か月以上いる母親も、運動不足解消のため、手だけでぶらさがって部屋の中を動き回っていました。

 1月27日の一般公開の日、たくさんのお客さんに囲まれ、すこし気になったのか、展示場の裏側に隠れて、こちらを覗きこむようにしていました。最近、ミンピーは私たちをよく見るようになりました。私たちが母親にヨーグルトを与えていると、ミンピーがじっとこちらを見ています。また、母親に抱かれた状態から動こうと、体をゆすったり、手を広げたりしています。それまで母親の胸しかつかんでいなかった指も、母親の指など、体中をにぎるようになってきました。

 現在、ジプシーもチャッピー親子と同居させています。今年は冬があたたかく、幸い風邪もひかず、順調にそだっています。もう少ししたら外の放飼場にも出す予定です。今年のオランウータン舎はスカイウォークを含め、さらに楽しい展示になると思います。

 先日、デザイナーの池田泰子さんによる、ミンピーの「名刺」ができあがりました。多摩の他のオランウータンたちの名刺も作ってありますが、ミンピーの名刺はとりわけかわいく感じられます。

〔多摩動物公園飼育展示係 黒鳥英俊〕

(2007年2月16日)



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