ニュース
奇怪な姿、ウミグモ──葛西 2007/02/09

 ウミグモという生き物を見たことがありますか? 最近のヘンな生き物ブームにのって紹介され、本などで写真を目にした人もあるでしょう。まだ見たことがない方は、右の写真をごらんください。

 8本の肢が長く伸びたそのすがたから「ウミグモ」と呼ばれているのですが、陸にすむクモとは体の構造が大きく異なり、分類的にも別のグループに属します。長い肢の中心にある体はとても小さく、体に収まりきらない消化器官や生殖腺は、肢の中まで入りこんでいます。

 先月(2007年1月)、東京湾外湾で行った深海生物の採集で、水深 160メートルにしかけた網から引き上げられたヤマトトックリウミグモのお腹には、卵が大事そうに抱えられていました。この個体はオスでした。ウミグモは頭部に「担卵肢」と呼ばれる肢をもっており、メスが産んだ卵をオスはこの肢で抱えて守ります。

 ウミグモのなかまは、冷たい極地の海から熱帯の海、水面直下から水深4千メートルを超える深海まで、世界中にたくさんの種類がくらしています。しかし、多くが1~2センチ以下の小型のものなので、実物を見た人はあまりいないと思います。

 現在「深海の生物コーナー」1番目の水槽で、肢を伸ばした長さが10センチ以上あるヤマトトックリウミグモを2匹展示しています。ふだんは底面や
 壁でじっとしていることが多いのですが、岩陰に隠れていたり、砂に潜ったりしていることもあります。飼育係でも見つけるのに苦労しますが、みなさんも、その奇怪なすがたをぜひ探してみてください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2007年2月9日)



ページトップへ