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キリン「ハルヤ」、輸送の顛末(後編)──多摩 2006/12/08

(このニュースの前半はこちらをごらんください。)

◎東京へ

 午後1時、旅の始まりです。私たちはマイクロバスに乗り、トラックを追走。東北自動車動に入り、最初のサービスエリアでキリンのようす、ロープの状態をチェックします。真っ暗な箱の中を懐中電灯の光を頼り確認すると、ハルヤはじっと立っているものの、震えてはいません。箱に手を入れると外より暖かく、バスの中の方が寒いのではないかと思うほどです。

 5か所のサービスエリアに立ち寄ってハルヤのようすを確認しましたが、ハルヤは常に立っていて、座ることはなかったようです。走行中にゆるんだロープを締め直したことが一度あっただけで、大きなトラブルに見舞われることはありませんでした。

 高速道路をひた走るうちに、外はすっかり夜景になり、やがて見なれた地名の標識を目にするようになると、ホッとした気持ちになりました。雨のあがった多摩動物公園に到着したのはちょうど午後11時。10時間もの長旅で、ハルヤもさぞかしクタクタだろうと思って覗いて見ると、やはりじっと立っていました。夜とはいえ、東京は盛岡よりは暖かく感じられます。そこで、シートを少し開けて休ませました。

◎翌朝の搬入作業とハプニング!

 翌朝、「ハルヤ」はやはり立ったままでしたが、前夜に与えた水と餌を少量口にしていました。少しは元気を取り戻しただろうと考えながら、搬入作業に取りかかりました。

 ところがハプニングが起きました。低床トラックでは、起伏のある園内を走ることができないため、フォークリフトで箱をふつうのトラックに載せ替えようとしたときのことです(写真上)。驚いたのか、ハルヤは箱の中で回転しようして、そのまま座ってしまったのです。立ちっぱなしだったので、疲れが残っていたのでしょうか。

 そう思ったのもつかの間、ハルヤが立ち上がろうとしたその瞬間、なんと天井を突き破って頭と首が出てしまいました!(写真中上)頭を押し込んで戻すのは無理なので、一度天井をすべてはがし、シートをかぶせながらハルヤの頭を下げさせ、その状態で上から板を張ることにしました。

 こうしてなんとか箱に収め直し、園内を移動して、キリン舎へ入れることができました。盛岡で箱に入ってからちょうど24時間後のことです。部屋に入ったハルヤは落ちついたようすでしたが、何かを確かめるかのように、室内でグルグル歩き回っていました。しかし、餌も軽く平らげ、元気そのものです。

 検疫期間中は群れとはいっしょにできないので、翌日、小放飼場に出してみたところ、柵越しにメスたちと穏やかに触れ合っていました。そして、12月5日からみなさんの前にお目みえしています。

 ハルヤはメスよりもひとまり大きいので、大放飼場で大きく目立つキリンを見たら、きっとそれは「ハルヤ」です。力強いそのすがたを、多摩動物公園でぜひごらんください。

〔多摩動物公園飼育展示課 清水勲〕

写真上:フォークリフトでトラックから輸送箱を移動
写真中上(左):ハルヤが天井を突き破る!
写真中上(右):「すいません、頭出ちゃいました」
写真中下:ハルヤ(右)に対して興味深げなメスたち
写真下:無事室内に入ったハルヤ

(2006年12月8日)



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