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砂の中からUFO出現!エキセントリックサンドダラー
 ──葛西 2006/11/10

 葛西臨海水族園の世界の海「カナダ沿岸」の水槽に、エキセントリックサンドダラーを展示しました。サンドダラーとは sand dollar。「砂のコイン」という意味です。

 写真をごらんください。円盤のような形をしています。いったい何のなかまか想像がつきますか? じつは、この変わった生き物は、イガグリのようなトゲでごぞんじのウニのなかまです。

 実際、ウニを上から下に押しつぶして平たくした形をしていて、細く短いトゲが体じゅうをおおっています。ウニやヒトデなどの棘皮動物は、基本的に体の中心から外側に向かって5方向に放射状に伸びる体のつくりをしています。5本の腕を持つ星型のヒトデがその典型です。

 砂から出ているサンドダラーをよく見ると、体の上に、桜の花が咲いているような5枚の花びら模様(「花紋」と呼ばれ、水中から酸素を取り込む呼吸用の管足)があるのがわかります。サンドダラーも、やはりウニやヒトデと同じ棘皮動物のなかまであることがこんなところに現われているのです。

 じっと観察していると、砂の表面をゆっくり動くときに、体表面の短いトゲを使っているのがわかるかもしれません。また、ときどき砂の上にコインが突き刺さったような姿勢のサンドダラーを見ることがあります。プランクトンや生物の破片など、水中を流れてくる細かい餌を短いトゲで効率よく捕まえようとしていると考えられています。そのすがたは、何か気ままなオブジェのようにも見えます。

 水族園のエスカレーターを降りるとサメとマグロの水槽がみなさんをお出迎えしますが、そこでダイナミックな泳ぎを観察した後、「世界の海」最初の水槽でスローモーションのような動きのサンドダラーをごらんください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 笹沼伸一〕

写真上:砂に「立つ」エキセントリックサンドダラー
写真下:乾燥漂白標本。呼吸をする水管(花びら状に広がっている)が見える

(2006年11月10日)



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