「トビウオ」というと、みなさんはどんな魚をイメージしますか? 春先に伊豆諸島から東京湾口に大量に来遊する、やや大型のトビウオを、伊豆諸島では「春とび」と呼び、初夏から真夏にとれるやや小型のものを「夏とび」と区別しています。この「春とび」が、今回展示しているトビウオの一種、ハマトビウオです。
日本近海の暖流域には、30種類あまりものトビウオ類が分布しています。このうち、先ほどの「春とび」はハマトビウオ1種をさしますが、「夏とび」の場合、ツクシトビウオ、アヤトビウオ、ホントビウオなど、10数種類のトビウオ類の総称になってしまいます。
このように、一般に使われる魚の呼び名には総称名が用いられることが多く、特定の1種類の魚をさしていないことが多々あります。
ハマトビウオは伊豆諸島で春先に大量に漁獲され、鮮魚や特産「くさや」の干物に加工されます。また、トビウオ類の中ではいちばん大きく成長し、全長は40センチくらい、体重 500グラムくらいのものが多いのですが、まれに全長が50センチを超え、体重も1キログラムくらいまで成長することがあります。
さて、このトビウオたちですが、資料によると海面から飛び上がり、時速60キロで300~400メートルも飛翔滑空すると書かれています。実際にどの程度飛ぶかを計測するのはむずかしそうですが、ずいぶん長い距離を飛ぶことはまちがいないようです。
いったい、どうやってこんなに長い距離を飛ぶことができるのでしょう? 興味のある方は、葛西臨海水族園の「東京の海」コーナーで、胸びれを広げて優雅に泳ぐハマトビウオをごらんになりながら、水族園スタッフにおたずねください。ご来園をお待ちしています。
〔葛西臨海水族園飼育展示係 江川紳一郎〕
(2006年10月20日)
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