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アフリカゾウ「マオ」輸送大作戦(1)──多摩 2006/06/16
◎マオ旅立ちへの経緯

 2006年6月13日(火)、多摩動物公園のアフリカゾウ「マオ」が盛岡市動物公園に旅立ちました。盛岡市動物公園には「たろう」と「はなこ」というアフリカゾウの雌雄がいましたが、2001年7月、はなこは難産により死亡。死産だったため、オスだけが残されたのでした。はなこのなきがらに、たろうは鼻をふっていたそうですが、職員の落胆も大きく、はなこの解剖は、だれもが無言のまま、淡々と進められたそうです。

 このたろうのお嫁さんに決まったのが、多摩のマオ。多摩動物公園は、盛岡市動物公園の要請を受け、「ブリーディングローン」と呼ばれる動物園間の貸借契約にもとづき、盛岡での繁殖をめざしてマオを「貸し出す」ことにしたのです。

 この移動に向けて、多摩では準備を進めてきました。輸送には大型トラックを使いますが、マオには箱に入ってもらわなければなりません。今回使用した輸送箱は、鋼鉄フレームに厚さ約4センチの米松材を取りつけたもの。マオの体高は約185センチ、体長約200センチ、体重1240キロ。このマオがすっぽり入る輸送箱は約2800キロの重さです。

 箱は前後2か所に扉があります。おおきなちょうつがいを使った片開き。箱に入れる訓練は、好奇心旺盛なマオのおかげでスムーズに進みました。訓練のようすを映したビデオは、東京ズーネットBB「アフリカゾウ『マオ』、出発に向けて訓練中」(2006年5月12日撮影)をごらんください。

 人間と遊ぶのに慣れているマオは、箱の中に入る訓練をいやがるどころか、「なんかあるの~?」とすぐ入っていくほど。出発1か月前には、盛岡市動物公園の職員が東京に来て、出発の日までマオのトレーニングを続けました。

◎出発の日

 ──そして、いよいよ出発の日。2006年6月13日。この日はマオ満4歳の誕生日でもあります(父親はタマオ、母親はアイ)。多摩の飼育担当者が、マオの安全を祈って、お守りを箱の扉にていねいに張りつけます。午後2時ごろ、いつもの訓練と同じく、足につけた長い鎖をはずして、輸送用の短い鎖につけかえました。いつもとちがって、今日は本当の出発の日。そのちがいを、マオが飼育係の表情や行動から読み取ったかどうかは、わかりません。「待つ」「回るー」といった号令をかけながら、とうとうマオをお尻からすんなり入れました。「アトへー」の号令の後、後足を鎖で繋留。エサを床にばらまいて、ドアをしめました。

 咆哮が聞こえます。「マオ、だいじょうぶ、だいじょうぶ」と声をかける飼育担当者。輸送箱の扉をボルトで締め、オレンジのベルトをかけ、マオのようすをみんなで見守ります。箱にあけた穴から現れる鼻。床を足で擦る音。体を箱にぶつける音。強く張った大太鼓のような音。作業はゾウ舎裏側でおこなったのですが、すぐそばの一般観覧スペースには、早くからかけつけ、作業をずっと見守っている、マオのファンの方々もいらっしゃいました。

 午後4時すぎ。フォークリフトで箱を持ちあげると、マオの動きで箱が大きく揺れます。4トントラックに乗せて、箱を固定。園内を移動して事務所の裏でさらに15tトラックに積み替えて、午後7時すぎ、おおぜいの職員に見送られて出発しました。

◎高速道路をひた走る

 多摩・盛岡両園のスタッフもマイクロバスでついていきます。中央高速、首都高、東北道と北上。ときどき箱から鼻が出てきます。午後8時40分、蓮田サービスエリアでようすを見ると、なんと前扉の木材部分に穴が! 牙で突き破ってしまったようです。

 午前零時、福島県の安達太良(あだたら)サービスエリアに立ち寄ります。一時の雨はやみ、霧が出ており、やや肌寒い中(気温17℃)、箱を確認すると穴が拡大しています! 板をあてて応急処置。作業は1時間近くかかりました。

 日付はすでに変わって6月14日午前1時半頃出発し、3時40分には宮城県の長者原サービスエリアに到着。走行中、いっときマオの鼻が箱から出てこなくなり、心配していましたが、このサービスエリアでマオはサツマイモを中心にずいぶんと餌を食べました。その後は鼻がふたたび現れるようになって一安心です。

(このニュースの後半は、こちらのページをごらんください。)

写真上から:
・マオを輸送箱にお尻から入れる
・フォークリフトで輸送箱を15トントラックに積みかえる
・東北道を北上
・蓮田サービスエリア着
・盛岡市動物公園着。クレーン車で輸送箱を移動する
・輸送箱から出たマオ。右は多摩動物公園の片柳職員。

(2006年6月16日)



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