ニュース
クマたちの丘、オープン!──上野 2006/04/28

 お待たせしました! 2006年4月28日、上野動物園に新クマ舎がオープン! 午前10時から開催した式典では、上野動物園園長・小宮輝之が、助成をいただいた財団法人日本宝くじ協会への謝辞を述べ、新施設への思いを語りました。

 「完成した『クマたちの丘』は、昔からの夢を実現した施設です。34年前、多摩動物公園の飼育係として採用された私が最初に担当したのは、ヒグマ、ツキノワグマ、キツネであり、彼らは同じ空間を共有していました。また、野外観察に青梅の民家を訪れたとき、タヌキやムササビなどが、かわるがわる『時間差』で現れるのに強い印象を受けました。また、飼育下のクマが冬になって、“ボーッ”としているのは、冬眠したいのではないか、と考えていました。

 そうした思いや日々の観察から、新クマ舎では、『時間差』の展示、そして『冬眠』の展示を実現しようと考えたのです。

 タヌキとツキノワグマは“同居”しますが、夜行性のタヌキは昼間は寝ています。両種のあいだには“しきり”があり、そこはタヌキだけが行き来できるようになっています。夜、クマは寝小屋に入れますので、閉園時間の16時間、タヌキはクマの放飼場を含む広いスペースを満喫できるのです。お盆には夜間開園をしますので、きっとタヌキたちの生き生きとしたすがたを見ていただけることでしょう。クマたちの行動も、きっと活動的になるはずです。

 また、冬眠の展示は、クマのほんとうのすがたをお見せしたいという思いから工夫しました。時間差展示も冬眠展示も、世界初の試みのはずです。あたらしい飼育技術の開発をめざすとともに、積極的な取り組みを続けていくことを皆さんにお誓い申し上げます」

 そして、式典後、「クマたちの丘」を大公開! 放飼場は、

 ・熱帯ゾーン──マレーグマとコツメカワウソ
 ・温帯ゾーン──ツキノワグマとホンドタヌキ
 ・寒帯ゾーン──エゾヒグマとキツネ

の組み合わせですが、コツメカワウソは“訓練中”で、公開は連休が終わってから。キツネもまだ登場していません。今しばらくお待ちください。タヌキはオス2、メス3。ツキノワグマの「マー」(オス)と「クー」(メス)が放飼場をうろうろする中、やはり夜行性のタヌキは巣穴の中で落ち着いていたようですが、夜8時ごろ、そーっと見にいったら、出てきていました、タヌキたち! もしかすると、閉園まぎわに見られるかも。

 式典と公開されたクマたちのビデオはこちら(QuickTime形式、55秒、10.5MB)。

 ツキノワグマの放飼場には「クマ棚」も再現。これは、クマが樹上で堅果などを食べた跡で、折られた枝が重なったもの。その他、揺り動かすとえさが出てくる装置も設置しました。

 エゾヒグマの「ポン」と「ポロ」(いずれもオス)も活発に動き回り、放飼場内につくった水の流れで遊ぶすがたが、注目を集めていました。

 マレーグマは母親のキョウコと子どものマチ(メス)が出ており、倒木の樹皮を懸命にはいでいました。放飼場内には大きなシイとムクノキがあって、マレーグマの木登りが見られるよう工夫しているところです。クマたちの森での生活を、新展示の中でぜひ観察してください。

 ツキノワグマの冬眠展示については、今後、飼育室の温度調節などをコントロールしながら挑戦します(現時点では、冬眠展示室をのぞくと、そこで寝ているのはぬいぐるみ)。

 冬眠展示に成功すれば、放飼場にツキノワグマがしばらく出ないことになります。つまり、「時間差」展示だけでなく、「季節差」展示もめざしています。

 周年展示の動物園としては、世界初の試みに挑戦する上野動物園の新クマ舎。オリジナルなアイデアによる、画期的な展示にご期待ください!

・東京ズーネットBBでご紹介したクマたちの動画
 「ヒグマの赤ちゃん」(2006年3月)
 「ツキノワグマの赤ちゃんの水浴び」(2005年8月)

写真上:式典でのくす玉割り
写真中:マレーグマ放飼場
写真下:水の流れで遊ぶエゾヒグマの子どもたち

(2006年4月28日)



ページトップへ