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モモイロペリカン捕獲大作戦──上野 2006/03/03
 上野動物園の不忍池にくらすモモイロペリカン。近親交配をさけるためにも、このたび東京都羽村市動物園にオス2羽を送り、同園からメス2羽を受けとることになりました。

 しかし、2006年2月24日、モモイロペリカンを捕獲するときに予期せぬ事態に……。

 不忍池のほとりには、モモイロペリカンのための餌場があって、フェンスで囲われています。フェンスの一部はドアになっているので、ここを開けて、食事に戻ってくるペリカンたちをおびきよせ、ドアを閉めてから、2羽を捕獲──の予定だったのですが、9羽は戻ってきたものの、3羽がまだ。しかも、3羽のうち、2羽が搬出個体!

 そこで、不忍池にボートを3台出し、岸辺のフェンスの隅に追いつめる作戦を決行。職員10人以上が結集しました。この日は気温が低く、折りしも冷たい雨。職員1人が潜水スーツで水の中に入り、ボートに指示を出しつつ、ペリカンを誘導します。……が、ペリカンも(時に)すばやい。

 ついに岸辺に追いつめ、捕獲に成功! 体に埋めこんだマイクロチップ番号を、外部リーダーで読み取って識別します。つづけて、もう2羽も捕獲。搬出用個体2羽をケージに収容し、羽村市動物園行きの車に積みこみました。

 2羽を送り出してから、もう一仕事。じつは、ペリカンの個体識別用に、これまで「足環」が使われていました。これは、金属などの素材を鳥の足のまわりにグルッと巻くものなのですが、ゆるんで落ちてしまうことがありました。そこで、ペリカンたちには、あらためて「脚帯」を装着することにしたのです。

 この脚帯は、いわゆる「結束バンド」のような構造になっているプラスチック製の帯(幅15ミリ程度)です。この帯を、「熱すると収縮する材質のチューブ」に通し、お湯で暖めてフィットさせると、色つきの脚帯のできあがり。つかまえたペリカンの足にまわし、締めすぎないようにして環をとめます。個体識別のためには、1色では足りないので、2色の組み合わせで工夫します。帯を二つ装着するときも、上下で直径が異なると、環が入れ替わってしまうこともあるので、直径はほぼ同じになるように調整します(ニュースページの写真をごらんください)。

 開園日の午後の作業でしたので、雨とはいえ、作業を興味深そうに見つめていらした来園者の方も。寒い中、作業を終え、一同ホッとしたのでした。

・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」のモモイロペリカンはこちら(動画もあります)。

(2006年3月3日)



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