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ウミエラってどんな生き物?
 ……オレンジシーペンの展示──2006/01/13
 葛西臨海水族園では、魚だけでなく、ヒトデやカニなど、さまざまな海の生き物を見ることができます。なかにはトリノアシ、テヅルモヅル、ケヤリムシなど、名前からは何のなかまなのか、どんな姿をしているのか、見当がつかない生き物もいます。今回紹介する「ウミエラ」もそんな生き物。いったい、どんな生き物なのでしょう?

 「深海の生物」コーナー、5番目の水槽。砂からオレンジ色の細長い、鳥の羽根状のものが立ち上がっています(写真)。「ウミエラ」のなかま、英名で「オレンジシーペン」(orange sea pen)と呼ばれる生き物です。魚のエラが並んだような姿から「ウミエラ」。羽根ペンに似ていることから「シーペン」(海のペン)というわけです。

 ところで、突っ立っているだけのウミエラを見て、「これって、生き物なの?」と思う方もいるでしょう。じつは見かけによらず、すごい生き物なのです。まず、伸び縮み自由。しかもかなりの伸縮率です。ニュースページにある写真のようにふくらんでいたかと思うと、キューッと縮まり、砂中にすっかり潜ることもできます。移動もできます。砂の上に出ている羽根状の部分は、体全体の約半分で、砂の中には棒状の体がもぐっています。それで器用にもぐるだけでなく、移動することもできるのです。水槽の中でも場所を移動しています。さらに、棒状部分の一部をふくらませてアンカーのように使い、不安定な砂地で体をささえています。

 高性能なフィルターももっています。羽根のような部分をよく見ると、両側に並ぶヒダの部分に、ポリプと呼ばれる小さなイソギンチャク様のものがびっしりと並んでいます。ウミエラは、イソギンチャクやサンゴのなかまで、このポリプでプランクトンを捕らえて食べるのです。たくさんのポリプがまるで網目のように配置された体を潮の流れに合わせて向けると、流れてくるプランクトンを効率よく捕まえることができます。

 多くのウミエラのなかまは、昼間は砂にもぐり、暗くなると砂上にあらわれ、えさをとるそうです。しかし、オレンジシーペンは完全な夜行性ではないようで、生息地であるバンクーバー沿岸で昼間潜ったときには、オレンジシーペンが林立する幻想的な光景を見ることができました。

 このように、ウミエラは砂地のくらしにうまく適応した、すごい生き物なのです。ウミエラだけでなく、海の中には、姿形もくらしも人間の想像を超えたユニークな生き物がたくさんいます。今年も、そんな生き物を紹介し、海の世界の奥深いおもしろさをお伝えします。
〔東京動物園協会調査係 天野未知〕


(2006年1月13日)



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