2003年6月12日、世界保健機構より「終息に近づきつつある」との発表のあった「新型肺炎SARS」ですが、その感染源のひとつとしてハクビシンが指摘されています。動物園でも、「動物園のハクビシンは安全でしょうか」という問い合わせをいただくようになりました。
中国と香港の研究機関の発表によれば、中国南部で食用にされているハクビシン、タヌキ、イタチアナグマからコロナウイルスが検出され、遺伝子構造がSARSウイルスとよく似ているそうです。
しかし、ハクビシンがもっていたウイルスの量は確認できておらず、人に感染するかどうかもわかっていないので、現時点では、犯人かもしれないと疑われているにすぎません。(追記:その後の研究により、SARSの自然宿主はハクビシンではなく、キクガシラコウモリと判明しました。)
日本にもハクビシンやタヌキが生息しています。地方によっては食用にもされているようですが、いままで日本でハクビシンやタヌキに接触してSARSに感染した事実はありません。日本に分布するこれらの動物は、SARSウイルスに感染する機会がなかったのではないかと予想されます。
しかも、日本の動物園では大陸からハクビシンを導入したのは30年以上も前のことなので、中国から動物を介してSARSウイルスがもちこまれたことも考えにくいことです。
さらに、都立動物園では、新着動物はすべて一定期間、動物病院に隔離し、検疫をおこなっています。この間、必要な検査をおこない、健康であることを確認してから、ようやくお披露目となるわけです。
このように、日本の動物園で飼育されているハクビシンやタヌキは安全です。
6月に入って、アメリカで人が「サル痘」(天然痘に似たサルの病気)に感染したというニュースが入ってきました。感染源はペットのプレーリードッグと見られています。
野生動物をむやみにペットとして飼育することは好ましくありませんし、イヌやネコなど家畜化された動物であっても、口移しで餌を与えるなど、過度の接触は好ましくありません。
今回のできごとは、人と動物のよりよい関係を考え直すためのよいきっかけになったのではないでしょうか。
〔上野動物園飼育課 成島悦雄〕
※ハクビシンは、都立動物園では多摩動物公園と井の頭自然文化園で飼育しています。
・東京ズーネット「どうぶつ図鑑」の
ハクビシンはココ
(2003年06月13日)