先週のことでした。知りあいの漁師さんから、「カニがとれたから取りにこい! でかいぞ!」という電話が入りました。いそいで車に大きなタンクをつんで出動!
港でカニをうけとり、長い脚一本一本を折れないようにヒモでしばってから、ふたたび水族園へ。到着後、カニを大きなマットの上に乗せ、4人がかりでソロソロと水槽へと運びこみました(写真上)。
無事搬入されたこのカニの正体は「タカアシガニ」。「高アシ」という名のとおり、脚が長~いのが特徴です。人間の頭より大きな甲羅を、1メートル以上にもなる長い脚でささえ、スクッと立ち上がったすがたは、とにかくかっこいい! 来園者の反応も、「わ~おおきい! すごい!」と上々です。
タカアシガニは、なんといっても世界最大のカニ。今回搬入したオス個体は、脚を両側に広げると2.65メートル、重さが16キログラムもありました。
さて、この巨大ガニ、現在「深海」のコーナーにて、アクリルごしにそばで見ることができます。まず、その大きさを堪能したら、からだの細部を見てみましょう。大きいだけにばっちり見えるので、おすすめです。
まず気づくのは、体をおおっている殻。カニを食べたときの殻のかたさを思いだしてください。かたい殻は身を守る精巧なヨロイのようなもの(メールマガジンNo.093のイセエビの記事で、このかたい殻について紹介しました)。
そして動き。ロボットのようなタカアシガニの動きは見ていてあきません。体や脚はいくつかの節からなっていて、節と節の間は多少なりとも曲がるしくみになっていますが、ヨロイをつけての動きは、どうもスムーズにはいかないようです。
さらに、こちらを向いてくれたら(?)チャンス。口はどこでしょう? 甲羅のお腹がわに、毛のはえた板が対になって何枚も重なっていますが、ここが口器。顎(あご)や顎脚(がっきゃく)とよばれるさまざまなかたちの部品からなっていて、複雑なメカのようです。
甲羅の先端には、なにやら2対の突起があります。これらは触角(しょっかく)ですが、そのうちの1対がヒョイヒョイと動いているのも見のがせません。これで水の流れやにおいを感じているのです。
ほかにもカニの体には不思議がいっぱい。望遠鏡のように突出した眼や、大きなハサミをさがしてみましょう。
タカアシガニはおもに水深150メートルから300メートルに生息しており、1989年に台湾の東方沖で見つかるまでは、日本の固有種とされていました。深海潜水艇では、何匹ものタカアシガニが、泥の上をゆっくり歩く姿が観察されています。薄暗い深海の海底を歩きまわる巨大ガニ、ぜひこの目で見てみたいものです!
〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕
|