ニュース
驚異の再生能力、ホウキボシ──葛西 3/14
 長い尾をもち、美しく輝く彗星(すいせい)は、その姿形からホウキボシとも呼ばれています。でも、今回紹介するのは海でくらすホウキボシ。いったいどんな生き物なのでしょう? 

 海の星といえば、5本の腕をもつ星形のヒトデ。じつは、ホウキボシもヒトデのなかまなのです。とはいえ、ふつうのヒトデとはちょっと形がちがいますよ。

 「東京の海」のコーナー、「小笠原の磯」の水槽をのぞいてみましょう。ここには、ホウキボシのなかまの「ゴマフヒトデ」がたくさんいますが、一つ一つ見ると腕の長さがいろいろで、みんな形がちがいます。

 この中で彗星をさがしてみましょう(写真上)。1本の長い腕に、4本の短い腕。たしかに尾をひく彗星に似ています。ほかにも1本の腕だけ短いもの(写真下)や、なんと腕1本のものもいます。

 なにか状態が悪くて、成長のしかたがバラバラになっちゃったのでしょうか? いえいえ、ちがいます。じつは、ゴマフヒトデは自分で自分の腕を切りはなし、そこから新しい体を再生させ、ふえていくことができるのです。

 水槽の中でも分裂や再生をしているようで、切りはなされたばかりの1本腕、1本の腕から4本の腕が再生しはじめている彗星型、そして1本の腕を切りはなした4本腕など、さまざまな形の個体が見られます。

 ところで、養殖のカキやホタテを食べてしまうヒトデを、漁師が駆除しようとバラバラにして海にすてたところ、再生して数が何倍にも増えてしまったという話が知られています。でも、やたらめったらバラバラにしたものが、全部再生することはありえないでしょう。再生能力は種類によって異なり、ふつうは口や肛門など、大切な器官がある盤(腕の中心部分)の一部がないと、再生はむずかしいことがわかっています。

 実際に分裂してふえるヒトデは、ヤツデヒトデなど20種ほどが知られていますが、ゴマフヒトデのように、たった1本の腕から体を再生できるのは、わずか6種しか確認されていません。ゴマフヒトデはヒトデの中でも、きわだった再生能力をもっているといえるでしょう。

 ホウキボシというロマンティックな名は、意外にも自ら腕を切ってふえていく、驚異の再生能力と関係があったのですね。水槽でクローンさがしをしてみましょう。          

〔葛西臨海水族園調査係 天野未知〕



ページトップへ