多摩動物公園の昆虫生態園で周年展示しているキボシカミキリは、クワの枝に産卵をします。卵を産ませるためのクワの枝は園内に自生する木を剪定し採取しており、メスはその枝をかじり、卵を産みます。枝の内部で孵化した幼虫が枝の中を食べ進み、ある程度まで育ったところで飼育係が幼虫を掘り出して回収し、その後はクワの葉と粉末セルロースを原材料にした人工飼料を与えて育てています。
いつも通り、幼虫に与えている人工飼料を交換していたところ、大きくなってもなかなか蛹(さなぎ)にならない幼虫がいることに気付きました。同時に育てたキボシカミキリの幼虫はみな、成虫になっています。
これはおもしろいと思い、その大きな幼虫の体重測定を始めました。通常のキボシカミキリが画像の右側で体重1.43g、左側の大きな幼虫の体重は、4.78gです。

大きさの異なる幼虫
左は大きな幼虫(4.78g)、右はキボシカミキリの幼虫(1.43g)

大きな幼虫の体重測定
約半年後、大きな幼虫が5.8gほどに育ったところでようやく蛹になり、その12日後についに羽化、正体は立派なクワカミキリでした。

長い触角が器用に丸まった状態の蛹
これは、園内で採取したクワの枝に、すでに野生のクワカミキリが産卵していたためと思われます。
ふだん、園内でクワカミキリの姿を目撃することはほとんどないのですが、多摩の豊かな自然の中でさまざまな昆虫が生きていることを実感した出来事でした。

成虫のクワカミキリ。「カミキリムシ」の名の由来にもなった、立派な大あごが見える
〔多摩動物公園昆虫園飼育展示係 吉川〕
(2025年10月03日)