マレーグマはクマのなかまのなかではいちばん小さく、野生ではよく木登りをして、果実や昆虫などを食べて生活しています。
また飼育下では、漁業ブイや竹筒などを「フィーダー」(えさ入れ)として与えると、器用に前足または4本の足で回したりして中に入ったえさを取り出して食べます。動物園や映像などでご覧になった方も多いかと思います。
上野動物園で飼育しているマレーグマも、吊るしてあるフィーダーを揺らしたり傾けたりして、また地面に置いてあるフィーダーを仰向けになって4本の足で持ち上げた体勢で中のえさを食べています。
さまざまな動かし方をしてフィーダーの中身を食べるマレーグマ
さて、そんなようすを間近で観察したりビデオ映像に撮ったりしていましたが、フィーダーからえさを取り出す口の動きはどうなっているのでしょうか? じっくりと確かめてみたくなりました。
そこである程度の強度がある透明な球を用意し、中に小型カメラを取り付け、ペレット(固形飼料)の出し入れができるように穴を開ける工作をおこないました。
試行錯誤を重ねて準備万端、諸々セッティングをおこない、透明球の中にペレットと落花生を入れ、マレーグマを運動場に出します。あとはマレーグマが中身を取り出して食べるのを待つだけです。
マレーグマはそれほど警戒せずに透明球フィーダーを持ち上げて回し、中身を食べました。特筆すべきは舌の長さと使い方です。あくびなどの行動で舌の長さを見たことはありましたが、この映像で見ると、じつに器用に使っています。
透明フィーダーからえさを食べるようす
野生では、この長くて器用な舌で、木の隙間に潜む虫を捕えて食べたり、果実の中身をうまく取り出したりしているのでしょう。
今後、みなさんが動物園でマレーグマが運動場でフィーダーからえさを食べているのをご覧になったら、今回の動画での舌使いの器用さを思い浮かべながら観察してみてください。
〔上野動物園東園飼育展示係〕
(2025年03月17日)
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