井の頭自然文化園の小獣舎では、3頭のニホンアナグマを飼育しています。このうち動物園生まれのオスとメスの2頭は、現在、繁殖をめざして同居しています。もう1頭は負傷のため保護された野生由来のメスで、上記オス個体の母親に当たり、単独で飼育しています。
3頭のアナグマたちが少しでも快適にすごすことができるようおこなった、この夏の取組みをいくつかご紹介します。
アナグマは夜行性であるため、開園中はジッと横になる姿を多く見ます。ところが、6月中旬から野生由来のメスの行動に変化が見られました。今までは横になっていた時間に、展示場の土を掘り返すようになったのです。掘り返した土が展示場の池に入って水が濁り、気をつけて歩かないと飼育担当者が転ぶほど穴だらけになりました。
野生由来のメスを観察していると、曇り空の涼しい日や、雨上がりの日に土を掘る頻度が高くなるようです。一方、動物園生まれの2頭は相変わらず横になる時間が多かったので、展示場の土をスコップで耕してから放飼してみました。少し掘った穴に排泄するようにはなりましたが、動物園生まれの2頭は、野生由来のメスよりも狭い範囲しか掘りませんでした。

穴掘りに適したアナグマの鋭い爪
【動画】積極的に穴を掘る野生由来のアナグマのメス
梅雨明け後、日差しが強く気温の高い日が続いています。そこで、気温が上がる昼過ぎに、アナグマに「馬肉入り氷」を与えてみました。動物園生まれの2頭は、飼育担当者の想定どおり氷をなめたり爪でひっかいたりして、氷の中の馬肉をとろうとしていました。オスよりメスの方が積極的でした。ところが、野生由来のメスは、見慣れないえさに警戒したのか、涼しい場所から移動したくないのか、馬肉入りの氷を離れたところから見るだけでした。

馬肉入り氷をなめる動物園生まれのオス
【動画】馬肉入り氷を与えたときのようす
一方で、馬肉入り氷を横取りするカラスを引き寄せてしまったり、アナグマが氷を動かしているうちに展示場の池に落としてしまったり、改善が必要な点にも気づきました。そこで、現在はえさを入れた氷を一口サイズに小さくして与えています。これにより、すぐに食べ切れてカラスを引き寄せることもなく、凍ったえさ(馬肉、リンゴ、煮イモ、バナナ)が体内からアナグマを冷やしやすくなりました。

凍らせたバナナと馬肉
【動画】凍らせたバナナを食べる動物園生まれのアナグマのメス
アナグマがその名のとおり穴を掘り、寒暖差がある季節を快適にすごすことで、多くの来園者に元気な姿を見せられるよう、今後も飼育環境の改善に努めていきます。
〔井の頭自然文化園飼育展示係 坂上琴音〕
(2021年08月21日)