葛西臨海水族園「世界の海」エリアの「カナダ西岸」の水槽をよく見ると、岩の隙間やフジツボの殻の中などに生き物が隠れています。中でも、中央の岩陰にぴったり張りつくように隠れているのがセイルフィンスカルピンです。

隠れているセイルフィンスカルピン
セイルフィンスカルピンは最大全長20センチほどに成長する魚です。北アメリカ西部沿岸の岩場などに身を隠してくらしています。水槽内でも岩の隙間に隠れ、体色も岩肌にそっくりなので、目を凝らさないとなかなか見つからないかもしれません。
この生き物の一番の特徴は、マストと帆のような背びれです。頭のすぐ上にある「第一背びれ」をピンと立て、その後ろに長く連なる「第二背びれ」をヒラヒラとなびかせて泳ぎます。この特徴的な背びれから、英語で「セイル」(帆)「フィン」(ひれ)と名づけられているようです。

セイルフィンスカルピンの卵
水槽内ではオスとメスの2尾を展示しています。オスはときどきメスを追いかけ、背びれを立てて体をブルブル震わせたり、メスのお腹を突っついたりしてアピールする行動も観察されています。

現在のセイルフィンスカルピン幼魚
産卵も確認されており、裏側の予備水槽では育成にも取り組んでいます。セイルフィンスカルピンは、直径2ミリほどの大きさのオレンジ色の卵を産みます。約2か月半後に孵化した時は全長5ミリほどしかなかった仔魚も、現在では全長2.5センチほどに成長しました。まだまだ小さな体ですが、立派な背びれを立たせて“大人顔負け”の姿です。
予備水槽の仔魚が成体と同じくらいにまで成長したらお披露目の予定です。ご期待ください!
〔葛西臨海水族園飼育展示係 柳下悠〕
(2018年01月05日)