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続・新たな視点で見てみると(58)3つの発光パターン?──ヒメカンテンナマコ
 └─葛西  2016/06/03

 葛西臨海水族園「世界の海」エリアの深海の生物コーナーには、比較的小型の深海生物を展示している「深海の生物1」水槽があります。この水槽で2016年4月から、体長5センチほどの小型のナマコ「ヒメカンテンナマコ」を展示しています。ヒメカンテンナマコはその名の通り、半透明でプヨプヨとした柔らかい体をしており、水族園でもなかなか長く飼育することが出来ない種です。


体は柔らかく少し透き通っている。カンテンナマコとは言い得て妙

 ナマコのなかまは敵から襲われると「キュビエ器官」と呼ばれる、ベタベタと何にでもくっ付いてしまう組織を吐き出したり、海底から跳ね上がって泳いで逃げたり、意外な「技」を繰り出して生き延びようとします。ヒメカンテンナマコも意外な「技」を持っており、突かれるなどの刺激を受けると青く発光します。真っ暗な深海では目眩ましに役立っているかもしれません。

 ヒメカンテンナマコがよい状態で水族園に搬入されるのはなかなかないことで、今まで発光するようすを見たことはありませんでした。今回いくつかの飼育個体がとてもよい状態なので、刺激を与えて発光させてみることにしました。

【動画:ヒメカンテンナマコのゆっくりとした動きと発光のようす】
前半は水槽内でのゆっくりとした動き。早送りのシーンは30分間の映像を
100倍速にしている。後半の発光は3パターンあるように見える

 水槽は真っ暗で、ヒメカンテンナマコがいる正確な位置はわかりません。だいたいの見当で、棒の先に付けたプラスチックバンドやピンセットで突いてみました。最初の個体は体表が青く光り、その光が粉のように水中に舞いました。そばにいた個体はひっくり返ってしまい、腹面が見える状態になりましたが、さらに刺激が加わると、波が伝わるように腹面全体が光りました。3匹目は別の水槽で撮影しましたが、この個体は刺激を受けると背中の突起が光りました。

 柔らかなヒメカンテンナマコをいつも突いているわけにもいかないので、発光をお見せすることはできませんが、少し透けている体も“怪しい”深海ナマコです。なるべく長く展示できるように努力しますので、水族園で直接その姿をごらんください。

〔葛西臨海水族園飼育展示係 三森亮介〕

(2016年06月03日)


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